2008年03月07日
広東省の珠海デルタ、香港・マカオとの連携で発展
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

 華南の中心都市・広州南側の海岸寄りに急発展する珠海市。香港—深せんが融合して成長する中、珠海はマカオ・香港と連携し国際都市を目指す。すでに高速道路、鉄道、港湾などのインフラ整備を終えており、1980年の「経済特区」から中国を代表する“経済新区”に生まれ変わる勢いである。

 珠海は広東省21市のうち広州、深せん、東莞、中山、仏山の各市とともに珠江デルタ経済を支えている。80年に深せん、仙頭、廈門(福建省)とともに中国政府から「経済特区」に指定され、これまでに産業開発、大学誘致、インフラ建設を進め、さらに香港、広州からのリゾート・観光地としての都市基盤を固めた。

 中国はEU、米国と肩を並べる経済力を築きつつあり、国際経済都市としての体制も整えようとしている。上海市浦東区の浦東新区(華東)に続き、昨年は天津市に海浜新区(華北)の建設を始めた。珠海については中国商務部、広東省、マカオ特別行政区などが華南の“珠海新区”を意識した支援を行っている。

 珠海の産業をみると、電子通信、コンピュータソフト、生物医薬、電気機械、石油化学などの先端産業が活躍している。行政区は北部の香州区、西部の斗門区、南部の金湾区に分けて統括され、南屏、新青など5つの産業開発区を置いている。電力は現在372KW、260KWを増設中。給水は1日180万トン。

 また、珠海国家ハイテク産業開発区、珠海保税区、高欄港経済開発区、万山海洋開発実験区、横琴経済開発区を独立、運営している。横琴経済開発区(86万平方キロ、マカオの約3倍、人口は2.5倍)はカジノや演劇、展示場、リゾート、観光で賑わうマカオに隣接したこれからの開発地域で、外資企業から注目されている。

 珠海に日本からはキリンビール、東芝、松下、キヤノン、住友化学、東洋インキ製造、フジクラ、ジャスコ、日本通運、岩谷産業、三菱商事、三井物産、伊藤忠など約200社がでている。
 
 地元ではほかに海外からオランダのフィリップス、シェルや米国、シンガポール、ドイツ、フランス、カナダ、香港などが投資しているが、日系企業の誘致に積極的である。世界最大のエアコンメーカ—・格力電機は地元企業。

 珠海市は産業地、商用地が入り乱れた深せん、東莞などに比べ都市計画が整備され、治安もよい。深せんの海岸には整った道路、ホテル、商店街、金融街が配備され、市の中心地からマカオまで続く。日本の熱海、米国のマホガニー、ポルトガルのブランコ、カナダのサリーと姉妹都市契約を結んでいる。

 居住環境に優れ、国連の国際的居住環境改善の最優秀賞を受賞(98年)したほか、中国の居住に適した10大都市のひとつに選ばれている。市の面積は7,653平方キロ(うち陸地面積1,653平方キロ)、人口145万人(うち93万人が戸籍登録)。

 06年の一人当たりGDP5万2,300元(同13.7%増)、貿易輸出入額328億2,100万元(同27.6%増)。会社従業員の給与は管理職月3,000-6,000元、一般従業員1,800-3,600元。従業員は地元からの人が多く定着率がよい。

 教育では市北部に大学城をつくり、中山大、曁南大、吉林大、北京理工大、北京師範大、遵義医学院、ハルビン工業大の7大学の分校を誘致した。8万人余の学生が在籍している。

 交通は珠海から高速道路が北部の北京、中部の太原市(山西省)、西部の重慶市に結ばれ、空港は95年に完成した珠海空港(滑走路4,000メートル、香港空港に管理委託)のほか、深せん、香港、マカオの3空港がある。また、広州国際空港までは車で2時間の距離。

 港湾では1万トンから25万トンまでの船100隻が接岸できる岸壁を持つ高欄港と珠海港(40埠頭)などがある。珠江デルタ都市間モノレールが各都市に1時間以内で連絡、広州まで40分ほどで着く。豊かな河川6本が流れ、水上交通の役を果たしている。

 広東省の大型プロジェクトとしては広州(江村操車場駅)—珠海(高欄港)を結ぶ広珠鉄道の建設がある。全長187キロ、総工費131億6,000万元、輸送予定量年6,000万トン。昨年9月着工した。2011年の完成を目指す。高欄港の産業基地に石油化学(エチレン年100万トン)、電子機械、生物医薬、医療機器などのセンター建設を計画している市としては、期待がかかる。
香港—珠海—マカオ(東方明珠)をつなぐ「珠澳大橋」は83年に広東省、マカオ、香港政府から建設構想が出されて以来、23年かかったが、ようやく2月に着工がきまった。全長36キロ、総工費563億元、2014年に完成する。

 現在のフェリーによる所要時間は1時間から1時間10分。これが30分程度に短縮される。カジノ、観光客を受け入れるマカオ、リゾート、産業にかかわる人々を受け入れる珠海にとって待ちに待ったプロジェクトだ。

 同大橋の開通を待ってきた珠海とマカオは昨年5月に珠海国際会議センターに欧米、東南アジア諸国、台湾、韓国、オーストラリアなどの関係者約1,200人を招き「珠海・マカオ投資環境説明および経済貿易交流会」を開いた。

 その席で中国本土政府がマカオと経済貿易関係の発展を促すために締結した「大陸部・澳門間経済貿易化協定(CEPA)」を明らかにした。コンピュータ関連サービス、市場調査研究、経営コンサルテング関連サービス、公共事業、ビル清掃、撮影、出版・印刷、翻訳・通訳、環境、社会サービス、スポーツの11項目を大陸部が認め、計40項目となった。
 
 珠海とマカオはすでに経済、産業、観光、リゾートなどの国際的な振興をはかることで合意、特に産業開発区、保税区などついて対外的に協同で行うクロスボーダー(境を超える)協定を結んでいる。