2010年07月28日
化学オリンピック日本委員会・野依良治委員長の閉会式挨拶
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野依良治化学オリンピック日本委員会委員長

 第42回(国際化学オリンピック)大会の閉会に当たり、一言ご挨拶申しあげます。20日の開会より本日までのプログラムは、内容的にも高度な、またスケジュールも密度の濃いものだったと思います。

 フランスの天才科学者、ルイ・パスツールの有名な言葉に「科学に国境はない。しかし科学者には祖国がある」があります。科学は客観的です。しかし、発見し、知識をつくるのは人間の営みです。

 それぞれの地域と民族には固有の文化があり、科学者たちもそれを心の拠りどころとして育ってきました。そこで、お互いに異なる文化に敬意をもち、その上で人類生存のために連帯をする。互いの文化を尊ぶ文明を構築することが21世紀の科学者、技術者の使命だと信じます。

 20世紀は戦争と経済に象徴される国際競争の時代でしたが、21世紀は限りある地球の枠組みの中で、人類生存のための国際協調に向かわねばなりません。各国の存立の背景は異なり、しばしば国益は相反しますが、いかなる国といえども孤立しては存在し得ません。すべては個人間の理解からはじまります。永きにわたる友情、確固たる信頼関係は国際的安全保障の要といえます。

 私は、次世代を担う皆さんが、生き生きと学び、そして将来さまざまな分野で活躍していくために必要な基本的な素養を身につけてほしいと考えています。学科の勉強だけでは不十分で、世の中の決まりごと、道徳や人との接し方なども学ばなければなりません。社会が望む人材は一様ではありません。また人によって能力も価値観も異なります。意欲あふれる多様な人材が必要です。皆さんが新しい時代にふさわしい、そして広く社会に貢献する人に育ってほしいと考えます。

 この後、皆さんは、それぞれの国・地域にお戻りになりますが、ぜひこの化学オリンピックで築いたネットワークや科学に対する新たな情熱を発展させていただきたいと思います。そして、東京でのこの思い出を人生の糧とし、やがて世界に羽ばたかれることを心から期待します。

最後に、この大会を支えてくれたこの会場の皆さんに感謝を申し上げ、閉会の挨拶とさせていただきます。