| 2008年03月18日 | |
| <対談> 「重要性高まる住まいの省エネ・断熱と塩ビサッシの役割」 | |
(財)消費科学センター理事・消費科学連合会副会長 犬伏由利子氏 塩ビ工業・環境協会樹脂サッシ普及促進委員会委員長 市村浩信氏 現在、世界共通の重要課題の一つは地球温暖化の防止、温室効果ガスの排出削減にある。このためわが国も、京都議定書で世界に約束した“1990年比6%削減”の実現に懸命に取り組んでいるが、現実は残念ながら目標に程遠いレベルにとどまっている。その最大の要因は、業務その他部門と家庭部門の排出量が縮小どころか、逆に大幅に増えている点にあると言える。政府もこの点を重視し、両部門で大きな比重を占める建物の断熱・省エネの推進に力を入れ始めている。 注目されるのは、関係府省の多くが、全ての建物の最大の開口部である窓の断熱・省エネ化を強力に推進していく構えを示している点だ。そこで、かねてから窓の断熱・省エネに大きな効果をもたらすことで知られる樹脂(塩ビ)サッシの全国的な普及に取り組んでいる塩ビ工業・環境協会の「樹脂サッシ普及促進委員会」の市村浩信委員長(信越化学工業顧問)と、消費者団体の一つ、消費科学連合会の犬伏由利子副会長(財団法人消費科学センター理事)のお二人に「重要性高まる住まいの省エネ・断熱と塩ビサッシの役割」について話し合ってもらった。 — はじめに市村さんから、塩ビ工業・環境協会が樹脂サッシ普及促進委員会を設置して塩ビサッシの普及に取り組むことになった背景についてご紹介いただきたい。 市村 樹脂サッシ普及促進委員会が設置されたのは2002年12月で、活動を開始したのは翌年1月からでした。何故、こうした特別の組織を立ち上げたかですが、簡単に言えば、順調に拡大してきた塩ビ樹脂の国内需要が96年をピークに一転して年々縮小の一途をたどるようになり、業界全体に強い危機意識が芽生えたからです。96年当時200万トン強であった年間国内需要量が02年には146万トンまで縮小したのですから、加工業界も含めた関係業界全体が強い危機感に襲われたのは当然です。 ではどうしてそんなに急激に国内需要が減ったのかですが、最も大きく影響したのは十年前に起きたダイオキシン騒ぎでした。当時は連日のように、多くのマスメディアが塩ビをダイオキシンの元凶のように報道したので一気に塩ビに対する不安感が広まり、様々な分野で塩ビ忌避の動きが出てきた。 さいわい、その後の塩ビ関連業界挙げての必死の努力と各種公的機関の調査によって、塩ビ元凶説が誤りであることが確認され、公表もされました。しかし、いったん世の中に染み付いたマイナスイメージはなかなか払拭できず、需要縮小の傾向に思うように歯止めをかけられないまま時間が経過していったのです。 そこで、これはやはり業界自らが総力を結集して、世間に正しい認識を持ってもらうための活動を組織的かつ効率的に展開していくほかないと考え、先ずは、人々の暮らしと最も密接なかかわりを持つ住宅関連製品、サッシとサイディングを対象に塩ビ製品の安全性と優れた断熱・省エネ性などの環境適性をきちんと知ってもらうための広報活動をスタートさせることにしたのです。 — 数ある住宅関連際品の中で、サッシとサイディングに的を絞ったのはどうしてですか。 市村 それは、海外に比べて日本の普及率があまりにも低いレベルにとどまっていたからです。サッシで言えば、当時欧州における塩ビ製品の市場占有率はすでに全体の60%から70%くらいに達していました。米国でも全体のおよそ50%が塩ビサッシで占められていました。また、韓国や中国でも急速に塩ビ製品が普及しはじめており、いまでは普及率が50%前後まで上がっていると伝えられています。 それに対して日本の場合は、気温の低い北海道では早くから塩ビサッシが採用されていたものの、それ以外の地域にはほとんど普及せず、日本全体の普及率はせいぜい8%ていどにとどまっていました。そこで、海外とわが国でどうしてこんなに大きな違いが生じたのかを調べてみたのですが、結局、日本では塩ビサッシの優れた断熱・省エネ性能を一般の人々に知ってもらえないままにきた、という結論に行き着きました。そこで全ての地域の人々に塩ビサッシの持つ優れた環境適性を知っていただくための組織を発足させることが急務ということで意見が一致して、樹脂サッシ普及促進委員会を立ち上げたわけです。 — いらい5年が経過したわけですが、これまでの歩みをざっと紹介して下さい。 ■行政府も理解、多彩な普及支援策を展開 市村 先ず、窓枠を塩ビサッシに替えた場合に実際にどんな効果が得られるかを具体的に証明するためのデータの作成・整理から着手しました。その結果、優れた断熱効果が得られ、それに伴って暖房や冷房に要する電力の消費量を大幅に節約できることや、結露によるカビやダニの発生に悩まされることがなくなること、住まい全体を適温に保つことができるため冬場に起こりがちなヒートショックで高齢者が命を落とすことも防げる、といった多くのメリットをはっきり示すデータを集めることができました。 そこで環境省、国交省、経産省など関係省庁を訪ねてそうしたデータを示し、普及を支援していただくよう要請したのです。各省とも十分理解して下さり、地球温暖化防止の観点からも塩ビサッシの普及をバックしようとの方針を固めて、具体的な支援政策を次々に打ち出して下さるようになった。建築学界の権威ある方々が同様な観点から私たちの活動を支援して下さったことも大きなプラスになりました。 それともう一つは、行政府自身が、住宅政策を従来の“量の充足から質の充実へ”と大きく転換させるべき時期にきたと考えていたこと、これも私たちに取って幸いでした。 — 関係省庁が講じてきた普及促進策にはどんなものが挙げられますか。 市村 一般市民がリフォームを実施する際に、家屋の断熱化の手段の一つとして塩ビサッシによる断熱窓を設置する場合、その工事に要する費用の3分の1を補助するとか、税制面で塩ビサッシの採用に優遇措置を講じるとか、さらには学校の校舎の断熱化のための塩ビサッシの採用に補助金を交付する等々さまざまな普及促進策を実行していただいています。 また環境省では、地球温暖化防止策の一つとして霞ヶ関の合同庁舎のうち環境省が入っている4フロアー全てに樹脂サッシと複層ガラスとの組み合わせによる内窓を設置することにし、一昨年から段階的に設置拡大しておられます。今年3月末には4フロアー全ての窓が断熱・省エネ窓に替わる見通しですが、これまで設置が完了した部屋の職員の方々に伺うと、冬場でも暖房なしで過ごせるようになり快適だととても好評です。 — 住宅建築会社や設計事務所、一般市民に対するPR活動はどのようにして進めてきたのですか。 市村 各地で開催される住宅関係の多くの展示会に委員会からチームを派遣して、実物とパネルを使って塩ビサッシの優れた断熱・省エネ性能等を建築関係者と一般消費者の双方にわかりやすく説明するようにしてきました。訪問地は北海道から沖縄まで国内のほぼ全域に及んでいます。 その結果、地方の工務店の中にはすっかり塩ビサッシに惚れ込んで、受注した住宅には必ず塩ビサッシを設置するようにして下さっているところも出てきています。しかし、一般市民の方々にはまだ十分にこの優れた効果が知られていません。私たちのPR不足だと、その点を反省しながら、より効果的なPR活動の展開を目指して努力しているところです。知ってさえいただければ、急速に普及していくはずですし、それによって住宅の価値が飛躍的に高まることになり、わが国全体の温暖化ガスの排出量の削減も大きく前進することになるはずです。 — 犬伏さんからもいろいろお聞きしたいと思います。先ずは、地球温暖化問題についてのお考えからお話し下さい。 ■消費者の志向は“少しのがまん、少しの経済負担での省エネ” 犬伏 地球温暖化問題の背景や実態については、いろんな学説がありますね。ですから私などは、何が問題なのかが十分に把握できないでいる状況です。けれども、日常の暮らしの中では、これまでだと冬には枯れていた木々や植物が一向に枯れなくなったりしている現象を目の当たりにしていますので、やはり大きな問題が起きつつあるとの実感は持っています。京都議定書の内容は、日本はこういう目標を立ててがんばっていくんだというメッセージを世界に向けてきちんと発信した素晴らしいものと思っています。 では、私たち一般消費者がどういった行動を起こすべきかという話になると、なかなか簡単ではありません。これまで私たち消費者は、経済面の大きな負担を伴わないテーマや大変ながまんをしないでも済むテーマ、例えばレジ袋の使用を自粛する運動など日常生活の中でちょっと努力すればできるケースについては、あまり抵抗なく行動を起こしてきました。 ところが、省エネのために暖房の温度を下げるとか、使用時間を短縮するとかの話になると大変ながまんが必要となり、とりわけ子育てに苦労している若い人たちは子供に風邪をひかせたら大変と考えてどうしても及び腰になってしまうという問題があります。 住まいを断熱・省エネ型に替えればよいと言われるかも知れませんが、それにはかなりの負担が伴うことになる。特に最近は景気に陰りが出てきているのでなおのこと簡単に踏み切れません。それやこれやで、一般消費者に地球温暖化防止のための大がかりな省エネ活動を求めても、なかなか受け入れられないのではないかと思われてなりません。少しのがまん、少しの経済負担でできる省エネ方法を考えていくこと、これが結局はなによりも大切ということになります。 — その意味では、電力費用の節約にもなる塩ビサッシの採用などは十分検討に値するのではありませんか。いまの市村さんのお話をお聞きになっていかがですか。 犬伏 塩ビ製品は、市村さんのお話にもありましたように一時期、イメージが本当に悪かったですね。それもあって、窓と言えばアルミサッシというのが当たり前となっていて、断熱を考えた場合も、せいぜいガラスを二重にするだけで過ごしてきました。それでも冬場は窓枠が冷たいため部屋が冷やされ、特に高齢者の中にはつらい思いをしながら、もっと優れた断熱製品があることを知らずに冬を過ごしてきた人が多かったわけです。 塩ビサッシが様々な長所を持っているのに北海道や東北地方を除いてあまり採用されずにきたのは、やはりダイオキシン発生の原因になっているという観念が広まっていたことと、もう一つは、家を建て替える時に廃棄される塩ビサッシは一体どうなるのだろうという心配があって、それも多少は影響してきたのではないかと思います。これまで私たちは、塩ビ製品を燃やすとダイオキシンなどの有害ガスが発生したり焼却炉を傷めたりするという話ばかり聞かされてきましたからね。 勉強不足と言われるかも知れませんが、消費者の多くは日常の暮らしに追われていて詳細に実態を調べる余裕がありません。ですから、報道や行政指導に頼っていくほかなく、結果として、よけいな回り道をすることが他のケースでも多々あったと言えます。それだけに、市村さんたちのこれからの広報活動は大きな意味を持ってくると言えます。 少し話が横道にそれますが、最近は、室内で乾かしていた洗濯ものがストーブの上に落下して火事になったという話をよく聞きます。また、寝ている子供が寒くないようにと、ストーブを点けまま買い物に出かけた後その家が火事になり、子供が命を落としたという話も耳にしました。ストーブを使っていなければ、そんなことにはならなかったはずです。 これから塩ビサッシが広く普及し、適度の室温を維持できるようになれば、そうした事故は防げるということになります。市村さんたち広報に携わっている皆さんとしては、そうした点もアピールしていけば、もっと効果が上がるのではないでしょうか。 火事の話をしたついでに市村さんにお聞きしたいことがあります。火災が発生した場合に石油から作られた塩ビサッシだと燃え易くて被害が一層広がるのではないかと心配する人が少なくないのですが、いかがですか。それから、廃棄物の問題に戻りますが、塩ビ製品はリサイクルが簡単とよく聞きます。サッシの場合はどんな方法でリサイクルされ、どのように活用されているのでしょうか。 プラスチックのリサイクル品というと植木鉢やボールペン、さらには擬木や枕木等が真っ先に思い浮かびますが、それらは結局世の中に氾濫して最後には再び厄介な廃棄物となって出てくるわけですね。それでは本当の問題解決にはならないのではないかとつい考えてしまいますが、いかがでしょうか。 ■一般市民に知っていただきたい、塩ビサッシの多くの長所 市村 いま犬伏さんが挙げられた点は、おそらく多くの方々に共通した疑問や不安だと思います。そうした疑問や不安に対して一つひとつ、ていねいに分かり易くお答えしていくことが塩ビ業界にとって最重要の課題だと言えます。 樹脂サッシ普及促進委員会や樹脂サイディング普及促進委員会がこの5年間、継続して全国各地で説明会やセミナーを開催し展示会に出展しているのも、先ずは多くの人々に塩ビ製品に対して正しい知識を持っていただくようにしたいとの思いからです。いま犬伏さんからいくつか重要なお問いかけをいただいたので、私なりに説明させていただきます。 先ず、塩ビサッシは石油からつくられているから燃え易いのではないかとのご質問ですが、実は塩ビ製品は燃えにくいのです。それというのも、塩ビ樹脂の原料の6割は塩であり、石油は4割にすぎないからです。この点が原料のほぼ全てが石油で占められている他のプラスチックと大きく異なるところです。 火災になれば熱で炭化しますが、自己消火性を持っているので、ご心配のように塩ビサッシが火災を大きくすることはありません。 それに、塩ビは石油依存度が低いので優れた省資源製品でもあるわけです。この点は、最近のように原油価格が高騰を続けている中で特に重要な意味を持つと言えます。 それと、リサイクルですが、実はプラスチックの中でマテリアルリサイクルが最も進んでいるのは塩ビ製品なのです。公共インフラの一つとして普及している塩ビ製の水道管も、家の建て替えや大型地震などで廃棄物となって出てきたものは、塩ビパイプ業界が各地から集めてきて、きれいに洗浄したうえでもう一度パイプに戻して使うようにしています。再生した原料だけでは強度などに問題が生じますので、バージンレジンとの複合管にしてもう一度市場に出すなどいろいろ工夫しています。 現在のリサイクル率は60.5%となっています。もともと塩ビ管は寿命が長く、公共インフラで使用されている製品は50年以上たっても劣化することなく優れた強度を維持していることが確認されていますが、特別の事情で廃棄物となった場合でも、もう一度長寿命製品に戻せるという利点を持っているのです。 農業用ビニルフィルムや電線被覆材もやはり多くがもとの製品にリサイクルされて使われ続けています。リサイクル率は農業用ビニルが67.6%、電線被覆材が85%です。もちろん、塩ビサッシもリサイクルは容易です。寿命が長いので、まだ廃棄物となって出てきていませんが、いつ出てきてもきちんとリサイクルできる仕組みはすでにできています。 塩ビ業界ではこうしたことに満足することなく、さらにレベルの高いリサイクルシステムの構築を目指しています。向こう5年間で20億円以上の資金を投入して、リサイクルシステムの一層の充実・強化を図り、より効率が高く波及効果も大きい新しいリサイクル技術や収集・再生システムの開発を進めていくことにしています。 業界内部だけでなく、外部の企業や大学などが取り組む技術開発なども積極的に支援していくことにし、現在候補を募集中です。塩ビ製品がリサイクルの面でも一歩大きく進んでいる点を多くの方にぜひご理解いただきたいと思います。 犬伏 ダイオキシンと塩ビの係わりは本当のところどうなのですか。消費者の中には、いまも塩ビはダイオキシンの発生の元凶と信じている人たちがいます。塩ビ製品は塩でできているから危ないのではないかという人もいます。 市村 いえ、さっきも触れましたように、一時世間でいわれた塩ビ製品だけがダイオキシン発生の元凶であるという説は、その後の私たちの活動や公的試験機関の実験や調査で完全な誤りであることが確かめられています。焼却の際のダイオキシンの発生はあくまでも焼却時の温度の設定によって左右されるわけで、塩ビ製品であれ何であれ、800℃で一定時間燃せばダイオキシンは発生しないのです。にもかかわらずマスコミの多くは、塩ビ製品を燃やせばダイオキシンが出る、だから塩ビはいけないと大騒ぎした。あまりにも一般市民の恐怖心をあおりすぎました。 犬伏 何故、あんなにマスコミは騒ぎ立てたのでしょう。 市村 猛毒のダイオキシンがばらまかれるという話は大きなニュース性があるからです。その中でたまたま元凶だと名指しされたのが塩ビだったのです。何の科学的根拠もなく、塩ビを燃やすとダイオキシンが発生すると言い立てられた。食品であれ何であれ、多少でも塩分を含むものを燃せばダイオキシンは発生しますがその量は微々たるものであり、問題にするほどのものでありません。 ところが当時は、量の多寡を無視してダイオキシンが出たということだけ取り上げて騒ぎ立てた。しかも塩ビ製品は原料の多くが塩素なので危険だといって追放騒ぎにまで発展していった。当然私たちは事実に反する報道だと猛烈に抗議しました。いろんな科学的データを揃えて訂正を求めました。けれど結局はあいまいな対応に終始して私たちの要求は無視されてしまいました。 犬伏 当時多くの人は、ダイオキシン問題はあくまでもきちんとした科学的根拠に基づいてクローズアップされていると信じていましたが、いまのお話だとそうではなかったことになりますね。だとすると、ダイオキシン問題ではわが国は、大変な時間と費用をかけて無駄な論議をしてきたのかも知れません。どんな問題でも、大切なのはあくまでもきちんとしたデータに基づいて冷静に議論することだと思います。当時はそれができていなかったということでしょうか。 それと、市村さん、塩ビサッシにはアルミサッシにはない強みとか利点があるようですが、かといってあまりに価格が高いと消費者はやはりしり込みします。そこで塩ビサッシを採用したことで生じる当面の経済的負担と、得られるプラス面、つまり長期にわたる電力料金の削減効果のようなものが、ひとめで比較判断できるようなデータは整備されているのでしょうか。 塩ビサッシを設置する時には、あるていどの経済負担が生じても、その後快適な暮らしができ、しかも支払う電力料金も安くなるということであればトータルプラスになります。 市村 もちろん、そろっています。そういったデータの存在ももっと早くから多くの方々に知ってもらうようにすべきだったのです。その努力が足りなかったためか、多くの人々に塩ビサッシの優れた省エネ性能や経済面での有利性を知ってもらえないままきてしまったと言えます。 ■わかりやすいデータを広く開示することが大切 犬伏 そういったデータがおありなら、ぜひ早く、そして広く開示してほしいですね。それともう一つ、既存の住宅に内窓をつけるとどうしても室内のスペースが狭くなります。これは結構気になるところです。外側に付けるのは無理なのですか。 市村 むろん、外側に取り付けることもできます。新築の住宅の場合は通常の工法で可能です。ただし、リフォームの際に外側に取り付けるとなると、壁の部分もいじることになるので工事費が少し高くなります。工事期間も内窓に比べて少し長くなります。けれど、そうした個人の経済負担については、先ほど少し触れた国の補助金など支援制度もありますので、どんどん利用していただきたいと思います。 犬伏 もう一つ教えていただきたいのは、結露に関することです。塩ビサッシに替えると結露の悩みから開放されると聞きますが、内窓を塩ビサッシにした場合、窓の部屋側に露が付着することはなくなるにしても既設のアルミサッシの窓との間に結露が発生して問題を起こすという心配はありませんか。 ■冷暖房費を40%節約できたとの実例も 市村 その心配はありません。ですからダニやカビが発生する心配がなく、特に幼児や学童の健康保持にも大きな効果を発揮することになるのです。それにも増して注目していただきたいのは、やはり優れた断熱・省エネ性能です。話が少し前後しますが、山形県のある工務店の調査によると、いくつかの家屋をリフォームする際に窓を塩ビサッシ窓に替え、外壁を塩ビサイディングで張り替えたところ年平均で冷暖房費を約40%節約できたとのデータが得られたといいます。 リフォームされたお宅を私も訪ねてみましたが、皆さん、以前と違い冬でも夏でもとても快適に過ごせるようになり、大変嬉しいとおっしゃる。しかも冷暖房費を節約もできるようになり本当に助かるとのお話でした。そして、結果としてCO2も削減できているのです。こういった話は多くの人々にぜひ知っていただきたいですね。 それともう一点、犬伏さん達にぜひ知っていただきたいことがあります。それは、全国の住宅およそ4,800万戸の窓を全て塩ビサッシと複層ガラスの組み合わせによる断熱窓に切り替えると、合計3,500万トンのCO2が削減できることが最近の建築学界の調査で明らかになったことです。これは日本がこれから京都議定書協定に基づいて減らさなければならない家庭部門から排出されるCO2のおよそ20%に当たりますからとても大きな意味を持つものです。 犬伏 それなら、国がそうしたデータを明らかにして思い切った塩ビサッシ普及政策を展開すべきではないですか。つまり国策の一つとして強力に推進していくことが大切ではないかと思います。 市村 おっしゃる通りで、実はいま経産省、環境省、国交省の3省が同じ思想のもとでいよいよ実行に乗り出そうとしているところなのです。さきほどちょっと触れました税制改正、つまり「住宅の省エネ改修促進税制案」の取りまとめもその一つです。さいわい、こうした行政府の積極的な動きに対しては政治家の皆さんや消費者団体、労働組合の方々も理解を示して応援して下さっています。これも、塩ビサッシの持つ省エネ効果の大きさが評価していただけるようになったからにほかならないと考えているところです。 犬伏 そうした政府の動きなどはハウスメーカーや工務店等にもきちんと知らされているのでしょうか。でないと実際の普及になかなか弾みがつかないという気がします。 市村 そうですね。ですから私たち委員会では、各地の工務店や建築関係者とできるだけ多く接触の機会を持ち、様々な情報を詳しくお伝えするようにしているのです。最近は地方の工務店の方々にも理解していただけるようになりました。塩ビサッシによる断熱リフォームを実施する場合にNEDOから材料・工事費の3分の1の補助金が施主に交付されることを知って交付を申請する市民が急増しているのも地方の工務店の多くが行政府の施策をきちんと市民に伝えて利用を促すようにして下さったからと思います。ちなみに、今年度のNEDOへの申請件数は前年度の3倍に増えました。これには、経産省がNEDOからの補助金の交付額を大幅に増やして下さったことが大きく寄与しています。 ■期待される国策としての普及促進策の展開 犬伏 公共施設での採用の見通しはいかがですか。政府が本気で取り組めば、それがモデルになって一般への普及が加速されるような気がします。さきほどお話に出た学校のエコ改修についても行政府の取組みしだいで塩ビサッシの採用件数は大幅に増えていくのではないでしょうか。繰り返しになりますが、今後のポイントはやはり政府が省エネのための国策の一つとして塩ビサッシの普及をどこまで積極的に推進していくかに絞られるように思います。 市村 公共施設については環境省に続いていろんな行政府から引き合いをいただいています。ですから、これからは着実に多くの官庁で採用が進んでいくと期待しています。また教育現場でも最近は塩ビサッシの持つ優れた断熱・省エネ性能が注目されはじめましたので、学校のエコ改修の際に塩ビサッシと複層ガラスによる内窓を採用するところが増えていくと見ています。また、議員会館などでの活発な採用にも期待しています。 犬伏 耐震性については問題ありませんか。大型地震によって窓が簡単に壊れるようでは困りますが。 市村 その点も心配はご無用です。ただし、私たち供給者側がそう言っても簡単には信じていただけないかも知れません。そこで公的なデータを整備する必要があると判断して信州大学に窓だけでなく塩ビサイディングも対象に加えた耐震性に関する研究をお願いしております。研究はすでに始まっていますので、データがまとまれば公表できると思います。それを見ていただければ耐震性についても十分な強度を持っている点をご理解いただけると思います。 — 都市部に多いマンションでの普及はいかがですか。 市村 さいわいに順調です。これには、非営利活動法人の「外断熱推進会議」とその会員会社である外断熱マンションのデベロッパー各社が塩ビサッシと複層ガラスの組み合わせによる断熱窓の採用を強力に推進して下さっていることが大きく寄与しています。これからさらに加速していく見通しです。 ■ぜひ、関係業界を挙げてより広範なPR活動を 犬伏 今日はいろいろとお聞かせいただき勉強になりました。けれども多くの市民は今回のように直接お話が聞ける機会はなかなか持てません。樹脂サッシ普及促進委員会の皆さんには、これまで以上に各地を周り、地方の工務店や市民の皆さんに詳しい内容をていねいにお話するようにしていただきたいと思います。 また、細かいデータ、例えば最初の投資額はこれぐらいかかるけれど冷暖房費がこれだけで済むようになるといったデータもきちんと整理して一般の方々でもそのメリットが簡単に理解できる工夫も必要かと思います。 また、せっかく優れた断熱・省エネ性能を持っていて地球温暖化ガスの排出抑制効果が高く、また暮らしの快適性の向上や家計の改善にも役立つのであれば、国だけでなく地方自治体も京都議定書の目標のクリアのために率先して公共施設に塩ビサッシを採用するよう皆さんが先頭に立って強力に働きかけていくことも大事だという気がします。ぜひがんばっていただきたいです。 市村 よくわかりました。おっしゃるようにきちんとした情報の提供の場をもっともっと増やしていくようにします。逆に消費者の皆さんには、国がどんどん充実させてきている様々な支援制度もうまく活用してぜひご自身で窓の断熱化に踏み切っていただきたい。実際に体験されれば、これまでとの明らかな違いに驚かれ、必ず満足されるはずです。 |