| 2009年01月15日 |
| 東京大学が樹脂サッシの内窓を試験採用へ |
| 本郷の第一本部棟に1月末に設置 |
東京大学は、東京・本郷の第一本部棟内の総長室フロアーに樹脂サッシによる断熱性の内窓を設置することにしてこのほど準備に入った。総長室と複数の理事室とで構成される総面積600平方メートルのフロアーの4方向全ての窓の内側に、樹脂サッシを使った高断熱・省エネルギー型の内窓を新たに付け加えることにしたもの。 樹脂サッシ製内窓の採用によって、同フロアー全体の断熱化がどのていど実現でき、そしてそれに伴い空調に必要な電力エネルギーの消費をどこまで抑えられ、その結果CO2の排出量をどのていど軽減できるかを明確に把握する、というのが今回の樹脂サッシ窓の設置の目的。 大手建材メーカーのトステムが1月末と2月初旬の計2日を利用して全ての設置作業を完了する予定。設置面積は、4方向トータルで104平方メートルとなる。 東大では、設置後ただちに各種の省エネルギーデータの測定作業に着手し、3月末までに必要なデータ全ての収集を完了する予定。その結果、明確な省エネ効果が得られることが確認できれば、本郷のキャンパス全体、さらには駒場、白金台、柏の各キャンパスでの採用についても検討を開始することになる。 樹脂サッシによる断熱窓の採用は大学では今回の東大が初めて。公共施設での採用は、一昨年末から昨年春にかけて霞ヶ関の合同庁舎5号館内の4フロアー全ての窓に内窓を設置した環境省と、昨年夏に同じく霞ヶ関の本庁舎の大臣室に同じタイプの内窓を設置した国土交通省に続いてこれが3件目となる。 今回の樹脂サッシによる断熱窓の試験採用は、同大の全キャンパスから排出されるCO2の大幅な削減を目指して昨年創設された「東大サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)」が今年から実施していくことにしている様々な断熱・省エネ施策の中でも極めて重要な意味を持つアイテムの一つと言えるもの。TSCPは小宮山宏総長の肝いりで創設されたもので、現在は実施部隊のTSCP室(磯部雅彦副学長が室長)が東大キャンパスをいかにしてサステイナブル化していくかについてのロードマップを検討している最中。今回の樹脂サッシの内窓による断熱改修試験は、同総長がかねてから強く推奨してきたこともあって、他のアイテムに先行するかたちで実施されることになった。 東大の調べによると、06年時点で東大のキャンパス全てで排出されるCO2は年間136,000トンで、うち本郷キャンパスでの排出量は都内の事務系事業所の中でも最も多いとされる90,000トンに達している。排出源の79%は電力で占められており、その電力の消費内訳は実験機器関連が36.6%、空調関係が31.8%、照明負荷が17.6%、その他が14.0%となっている。つまり、電力エネルギー全体の63.4%が実験系以外の分野で消費されているわけで、この点に注目したTSCP室では先ずはこの一般系分野における省エネに同大を挙げて取り組むことにしている。 TSCP室では、2013年3月末までの5年を第1フェーズと名付け、この期間内に全キャンパスのCO2排出量を15%削減する計画。そして2030年3月末までの第2フェーズで50%削減を実現することにしている。 第1フェーズにおける具体的な手法としては、大型熱源機器の更新、照明器具の人感センサーの設置、蛍光灯のインバータ化、冷蔵庫の更新、個別空調の更新、そして建物全体の断熱化のための樹脂サッシ窓の採用などが有力候補として挙げられている。第2フェーズでは、第1フェーズでコスト面から実現できなかった省エネ手法の導入と、太陽光発電などの創エネルギーシステムの採用に取り組む考えだ。 今回の樹脂サッシによる断熱性内窓の採用は、こうした壮大なスケールの省エネプロジェクトのスタートの第一歩を印することとなるわけで極めて重要な意味を持つ。 TSCP室の産学連携研究会の主査として今回の樹脂サッシ窓の試験採用をリードしてきた東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の坂本雄三教授は、樹脂サッシ窓の試験採用の持つ意義について次のように所感を述べる。 「地球温暖化の防止はいまや全世界共通の最重要課題となっており、こうした中にあって東大が自らのキャンパス全体で排出されるCO2の大幅削減に本格的に取り組んでいくことにしたことの持つ意味は大きい。特に本郷キャンパスはすでに築後70年以上の歴史を刻んでいてCO2の排出量が都内の事務系事業所の中最多となっているだけに大きな成果を上げることが内外から期待されている。 ついてはどんな手法を講じるかだが、当面必要と思われるものだけでも、大型熱源機器の省エネ型への更新、蛍光灯のインバータ化、冷蔵庫の省エネタイプへの切り替え等々、実に多彩だ。その中で、省エネ推進プロジェクトチームのTSCP室が他の案件に先行するかたちで樹脂サッシによる断熱窓の試験採用に踏み切ることにしたのは、学内外の多くの識者で構成されるTSCPワーキンググループ内の実験研究会のメンバーが様々な断熱・省エネルギー材料について実績や試験データの内容等を入念にチェックしてきた結果、樹脂サッシによる内窓の持つ断熱・省エネ性能に高い評価を下したからにほかならない。 向こう2ヵ月強の期間の測定で期待通りの断熱・省エネ効果を上げることを証明するデータが得られれば、第1本部棟全体からはじめて本郷キャンパス全体の建築物や他のキャンパスでも樹脂サッシによる内窓を順次採用していくことになる可能性がある。ただし、コストをどこまで抑えられるかが大きなポイントとなろう。地球温暖化問題のクローズアップに伴い、断熱・省エネ性能に優れる樹脂サッシに対する世間のニーズは確実に広がっていくと思われる。樹脂業界とサッシ業界とが一体となってコストの低減に努めつつ普及を図っていくことが望まれる」。 (編集部注;今回東大が試験採用することにした樹脂サッシによる『内窓』は、1月8日に国土交通省住宅局が「不正な試験体を使用して大臣認定を受けた製品」として公表したエクセルシャノンなど5社が販売した『外窓』とは仕様が全く異なる別の品種)。 |