2016年08月22日
理研、きのこのタンパク質がインフル・ウイルス抑制
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は22日、食用キノコのマイタケに脂質ラフトと呼ばれる動物細胞膜上の脂質構造に結合するタンパク質を発見し、それを「ナカノリ」と名付けるとともに、ナカノリの存在下ではインフルエンザウイルスの増殖が抑制されることを発見したと発表した。

細胞膜上の脂質ラフトは、スフィンゴ脂質とコレステロールを主成分とした領域(脂質ドメイン)で、細胞膜を介した情報伝達、膜輸送、ウイルスやバクテリアの感染において重要な役割を果たしていると考えられているが、その実態はよくわかっていなかった。

理研では今回、代表的なスフィンゴ脂質であるスフィンゴミエリンとコレステロールを用いて、人工的な脂質ラフトを作製し、結合するタンパク質のスクリーニングを行った。その結果、マイタケ抽出液から新しいタンパク質を発見し、「ナカノリ」と名付けた。ナカノリには、毒性がないため、生きた動物細胞での脂質ラフトの解析が可能になった。また、コレステロール代謝異常の患者由来の細胞で、細胞膜の脂質ラフトが正常細胞と異なっていることも分かった。さらに、インフルエンザ感染における脂質ラフトの役割について、ナカノリを使って調べた結果、インフルエンザウイルスは脂質ラフトの緑から出芽することがわかった。また、ナカノリ存在下では、培養細胞でのウイルスの増殖が抑えられることが判明した。これまでの抗インフルエンザ薬はウイルスのタンパク質をターゲットとするため、ウイルスの変異によって効果がなくなることが問題となっていた。

今回の研究では、宿主の脂質ラフトが抗インフルエンザ薬のターゲットとなりうることを示すとともに、脂質ラフトに特異的に結合するナカノリが抗インフルエンザ薬として有用であることを示した。
この成果は、米国の科学雑誌「The FASEB Journal」オンライン版(8月11日付)に掲載された。