2018年01月04日
【年頭所感】石油化学工業協会 会長 淡輪 敏
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:石油化学工業協会
淡輪石化協会長

【年頭所感】
       
    年頭のご挨拶
      
      石油化学工業協会 会長 淡輪 敏

2018年の新春を迎え、謹んで新年のお喜びを申し上げますとともに、年頭に あたりご挨拶申し上げます。

今年は、1958年(昭和33年)に、日本で初めて石油化学コンビナートが稼働し、当協会が発足してから60年を数えます。
人間であれば還暦で、干支が一巡し、今また、新たなスタートを切らねばならないと感じております。60年前は立ち上げの苦労はありましたが、営業運転に入るや フル稼働という順調なスタートを切り、各社とも、旺盛な国内需要からただちに第二期計画に着手しました。現在も、同様にフル稼働の状態で新年を迎えておりますが、能力拡大という状況にはありません。
グローバル化とイノベーションの波がその背景です。ある調査機関によると、新規技術のユーザー数が5,000万人に達するまでの期間は、過去に比べて飛躍的に短く なっています。ラジオは38年、テレビは13年を要したのに対し、iPodは4年、    インターネットは3年、ツイッターは9ヵ月。そしてポケモンGOに至っては、    たった20日間とのことです。ラジオ、テレビといったハードとポケモンGOのようなソフトを同列に置くのかという議論はあるでしょうが、市場のグローバル化、中間層の拡大、情報・流通速度、技術及びビジネスモデルの変化は、加速する一方である  ことを表しています。
AI、IoT等ICT技術のイノベーションには目を見張ります。アマゾン、ウーバー
などそれを活用した斬新なビジネスモデルも次々と登場しています。これらは、今後、産業そして社会をどう変えていくのか。当業界もこれら技術をどのように適用、応用して行くのか。スマート工場、素材開発のみならず事務処理、働き方改革まで真剣に考えていく必要があります。還暦を迎えた日本の石油化学産業が変貌するチャンスになるのではと考えております。

さて、新年ということでトレンド的なことを述べましたが、足元は、順調に推移しております。海外市況高、国産品への需要回帰、各社の構造改革のご努力に景気の拡大が加わり、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降48ヵ月連続で90%超を維持しており、しかもここ2年は、ほぼ95%を超えております(昨年11月までの実績)。しかし、原油価格の復調等により国産ナフサ価格は上昇しており、本年は、遅れていた米国シェールガス由来の石油化学製品のアジア市場への流入が懸念 されます。北朝鮮や中東地域での地政学リスクの増大も気になるところです。
このような状況下において、大きなトレンドへの対処はこれからですが、当協会としては、当面、以下の諸課題に積極的に取組んでいく所存です。

1.保安・安全の確保
保安・安全の確保は、最重要課題であり、事業を運営していく上で最重要な基盤であることは言うまでもありません。
 この理念を踏まえ、以下の各種取り組みを継続して行ってまいります。 
(1) 経営層の強い関与
保安・安全の確保、向上には、経営層のコミットメントが重要であること  から、現場に最も近い経営層である事業所長による意見交換会を引き続き開催し、保安レベルのさらなる向上を図ってまいります。
(2) 安全文化の醸成 
保安推進会議・保安表彰、事故事例巡回セミナー等により、トラブル情報・経験や、保安の取り組みに関する情報の共有化、危険に対する感性の向上等を進めてまいります。
「産業安全塾」についても、引続き充実させ、人材育成にも努めてまいります。
(3) IoT、AIの活用
ビッグデータ解析として国の実証事業を活用した「保温材下配管等腐食の 予測精度向上」については、本年は、予測システムの精度向上を図り、その   活用実証を進めてまいります。さらに、IoTやAIなどの様々な新しい技術の  適用可能性について検討を進め、操業の安定化、保安の向上に努めてまいります。
(4) 産業保安に関する行動計画
前年度のフォローアップを行い、2018年度の行動計画を策定します。

2.事業環境の基盤整備
我が国の石油化学産業が存在感をもち、持続的発展を遂げていくために、事業環境の基盤整備に取組んでまいります。
(1) イコールフッティング
グローバル化が進展する中で、厳しさを増す国際競争に打ち勝ち、持続的  発展を遂げていくためには、諸々の税制・規制の面でのイコールフッティングが極めて重要です。引続き、法人実効税率引下げ等の税制改正や規制改革の  実現のために積極的に取組んでまいります。
(2) 定期修理工事の課題等に関する検討
規制改革の一環として定期修理(定修)工事間隔の拡大が実現したことに より、一回当たりの定修工事量の増大、定修日数長期化に伴う新たな問題等、多くの課題が顕在化してきております。加えて、政府の「働き方改革」に   おける残業時間の上限規制導入に伴う影響も踏まえ、当協会では昨年「第3次石油化学産業における環境整備等検討会」(石環検)を再開し、定修検討の  WGを設置し検討を進めております。本年は、当該WGの活動により定修工事に係る課題を明らかにし、その解決に向けた方策をとりまとめる所存です。
(3) 環境関連(地球温暖化対策・マイクロプラスチックス)
環境関連は、石油化学産業の持続的な発展にとって極めて重要な課題であることから、経済産業省を始めとする国や、(一社)日本化学工業協会等他団体とも連携し、適時・適切に対応してまいります。

3.グローバル化対応の推進
米国におけるシェール革命により世界の石油化学産業の地図が描き換わり、人口減や製造業の海外移転等による国内需要の減少といった内外需給構造の変化に伴い、我が国石油化学産業においては更なるグローバルな展開が求め られております。
 (1) アジア石油化学工業会議(APIC)
アジアの石油化学企業が相互にコミュニケーションを図り、その健全な発展に貢献するための場として、アジア各国の協会と連携を図り、毎年アジア石油化学工業会議(APIC)が開催されております。
昨年の札幌に続き、本年は、5月にマレーシアで開催です。昨年新設され  好評であった環境分科会も引き続き設置されることとなっており、当協会と しても各国メンバー協会と連携し、成功裏の開催に向けて取り組んでまいります。
(2) 通商関係
昨年11月に大筋合意したTPP11、日・EU EPA、日・中・韓FTA、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)はもとより、NAFTA再交渉の動きや新たな二国間交渉等に関する情報収集を行い、適時適切に対応して まいります。
(3) 海外の情報収集等
海外の石油化学情報、原料関係、国内外の需給構造の変化や、石油化学産業を巡る国際動向に関する情報収集等を行い、また、会員会社のニーズをふまえ、テーマを設定し、講演・意見交換等も行ってまいります。

以上、三点に絞って述べさせていただきましたが、他にも、各種刊行物の発行やマスコミ等のステークホルダーへの情報発信といった幅広い広報活動等も展開してまいります。

 石油化学産業は、日本の「ものづくり」におけるサプライ・チェーンの出発点であるとともに、自動車・電機等の分野での先端技術開発に不可欠な機能性素材を創出しております。石油化学産業の強化は、日本の「ものづくり」の強化につながります。会員各社ともその自覚と誇りを持って事業の発展、競争力の強化に取組んでいるところです。
今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

最後に、日本経済の着実な回復と更なる発展を願うとともに、関係各位のますますのご活躍とご健勝を祈念し、新年のご挨拶といたします。            
                                        
以 上