2018年01月29日
東大など、世界初・反強磁性金属で磁気光学力ー効果観測
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学物性研究所の肥後友也特別研究員らの研究グループは27日、理研の計算物質科学研究チーム、米国の研究グループと協力して、室温で自発的に磁気光学カー効果を示す反強磁性金属の開発に世界で初めて成功したと発表した。

開発したマンガンとスズからなる金属間化合物Mn3Snは、互いを打ち消しあうように配置された複数のスピンで構成される「クラスター磁気八極子」を持つ反強磁性体。今まで無磁場かつ磁化を持たない反強磁性状態では、光ー磁気応答の一つである磁気光学カー効果は現れないと考えられていた。今回初めて、磁気八極子を持つ反強磁性体において、磁場と磁化がゼロの状態においても磁気光学カー効果が現れることを見いだし、磁気八極子が作る磁気ドメインの直接観測にも成功した。

この発見により、磁気光学素子の新たな開発指針が築かれた。今回確立した磁気光学カー効果を用いた非破壊・非接触な反強磁性ドメインの直接観察手法は、近年注目が集まっている反強磁性体を用いた熱電変換素子やスピントロニクス素子といった、反強磁性ドメインの制御が重要となる次世代の磁気デバイス研究への広範囲な応用展開が期待される。

同研究成果は国際科学雑誌Nature Photonicsの2018年1月26日付オンライン版に公開された。