2018年05月22日
東北大など、電流を曲げるだけで熱制御可能
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は22日、東北大学と共同で、磁性体中で電流を曲げるだけで加熱や冷却ができる熱電変換現象「異方性磁気ペルチェ効果」を観測することに世界で初めて成功したと発表した。熱電変換現象で加熱・冷却するためには、これまで2つの異なる物質を接合した構造が用いられてきたが、今回、接合のない単一の物質の磁気的な性質のみで熱制御できる新しい機能が実証された。磁性体における基本的な熱電変換現象であるにもかかわらず未観測であった異方性磁気ペルチェ効果が初めて観測された。熱電変換の基礎・応用研究がさらに活性化することが期待される。

本研究成果は、日本時間2018年5月22日0時(英国時間5月21日16時)に、英国科学誌「Nature」にオンライン掲載された。

今回、NIMSを中心とする研究チームは、ロックインサーモグラフィ法と呼ばれる熱計測技術を用いて、磁性体に電流を流した際に生じる温度変化を詳細に測定した。その結果、磁性体の磁化の方向と電流の流れる方向のなす角度に依存して、ペルチェ効果の性能が変化する振る舞いが観測された。磁性体において、電子のスピン(磁気)の効果によって、温度差を電気に変換するゼーベック効果が磁化の方向に依存して変化する現象は以前から観測されていたが、その逆過程である異方性磁気ペルチェ効果については本研究が初めての観測例となる。

今後、さらに大きな異方性磁気ペルチェ効果を示す磁性材料を探索・開発し、電子デバイスの効率向上・省エネルギー化に資するサーマルマネジメント技術への応用を目指す。