2018年05月29日
東北大「スピン流スイッチの動作原理を発見・実証」
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科学技術振興機構(JST)は29日、東北大学の齊藤英治教授(材料科学高等研究所/金属材料研究所)らが、スピン流の流れやすさを制御するスピン流スイッチの原理を発見・実証したと発表した。JST戦略的創造研究推進事業の成果。

スピントロニクスとは、電子の電荷だけでなく、スピンも利用した次世代の情報処理技術のことで、スピントロニクスを利用したデバイスは、高速かつ不揮発なメモリーや超高密度なハードディスクとして身近になりつつある。だが、スピン流の流れやすさを制御するスピン流スイッチを実現する手段が確立されておらず、その動作原理の発見・実証が望まれていた。

今回の研究は、反強磁性体(隣り合うスピンが、大きさは同じで逆向きに整列した磁性体)の相転移での振る舞いを利用して、スピン流スイッチが実現できることを実証した。スピン流の素子には、磁性絶縁体であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)とスピン流検出用の白金(Pt)の間に、反強磁性体である酸化クロム(Cr2O3)を挟んだ構造を用いた。

YIGからPtに向けてスピン流を注入すると、Cr2O3でのスピン流の流れやすさに応じた起電力がPtに生じる。研究では、この起電力測定を通じて、反強磁性相転移により、Cr2O3がスピン流に対する導体から絶縁体に変わることを見いだした。さらに、この相転移の近くで磁場を加えることによって、この相転移前後のスピン流の流れやすさを500%もの大きさで変化させられることを示した。齊藤教授らは、電流における類似の現象から、本現象を「巨大スピン磁気抵抗効果」と名付けた。

これは、外部磁場によってスピン流の流れやすさを制御できる、つまりピン流のスイッチを実現する原理を発見したことになる。同研究は、これまでスピントロニクスに欠けていたスピン流スイッチを見いだしたものとして、さまざまなスピントロニクスデバイスの展開に貢献するものと期待される。

本研究成果は、2018年5月28日(英国時間)に英国科学誌「Nature Materials」のオンライン版で公開される。