2018年07月06日
理研チーム、細胞の挙動を協調させる原理を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は6日、生命機能科学研究センターの小椋陽介特別研究員らの研究チームが、器官形成における上皮(細胞が隙間なく敷き詰められたシート状のもの)の折り曲げ運動を推進させる細胞外シグナル(細胞表面に結合することで情報を伝えるタンパク質)の組織内伝搬の仕組みをショウジョウバエで発見したと発表した。

同研究の成果は、多細胞組織で細胞の挙動を協調させる原理の一つを解明したことにある。また、将来的に再生医療の基盤技術につながる可能性のある知見となる。

臓器の多くは、細胞が側面同士で密に接着したシート(上皮)が折れ曲がることによって作られている。今回、研究チームは、細胞同士のコミュニケーションを担うシグナル分子と、上皮の折り曲げ運動の関係を明らかにするため、細胞増殖と分化に深く関わる「細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK=リン酸化酵素の一種)に着目した。

ERKは細胞外シグナルに対して、活性(オン)/不活性(オフ)の2通りの応答を示す。発生中のショウジョウバエ胚で、上皮組織(気管[4])の陥入運動におけるERK活性化の時空間分布を測定したところ、陥入初期には中心部に限定されていたERKのオン状態が、次々に隣接する細胞の“スイッチ”をオンにすることで、同心円状に波のように伝搬することを発見した。さらに、ERK活性化の波は、細胞内のモーター分子ミオシンの活性を制御して、上皮の陥入運動を調節することが明らかとなった。

本研究は、米国の科学雑誌「Developmental Cell」(7月16日号)の掲載に先立ち、オンライン版(7月5日付:日本時間7月6日)に掲載される。