2018年10月02日
産総研「リグニンのない木質」形成に成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

産業技術総合研究所は2日、植物機能制御研究グループの光田展隆グループ長らがメルボルン大学などと共同で、新しく同定した遺伝子を使い、従来の木質(二次細胞壁)の代わりにリグニンがなく、極めて酵素糖化性の高い細胞壁を高蓄積させることに成功したと発表した。バイオマス燃料や化成品の高効率生産への貢献が期待される。

植物の細胞壁は、どの細胞にも普遍的な一次細胞壁と、強度を必要とする細胞(繊維細胞など)に蓄積する二次細胞壁に大別できる。二次細胞壁に多く含まれるリグニンは、バイオマス分解を阻害し燃料や物質生産の障害となる。今回リグニンを含まない一次細胞壁の形成を制御する遺伝子として「ERF転写因子群」を発見した。これを二次細胞壁を形成しないシロイヌナズナ変異体に導入することで、リグニンがなく酵素糖化性の高い一次細胞壁に似た細胞壁を繊維細胞に高蓄積させることに成功した。

今回発見した転写因子を利用した木質改変植物の開発により、木質バイオマスを利用する工程で必要なエネルギーや化学薬品を減らすことができ、二酸化炭素排出削減への貢献が期待できる。

この技術開発の詳細は、2018年10月1日(現地時間)に英国科学誌「Nature Plants」にオンライン掲載された。

<用語の解説>
■リグニンとは:二次細胞壁の主要構成要素の1つ。芳香環を持つ化合物が複雑に重合して作られる巨大なポリマー。木質バイオマスからセルロースやその分解物であるグルコースを取り出すにあたって阻害要因となる。