2019年01月07日
年頭のご挨拶 石油化学工業協会 森川宏平会長
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:石油化学工業協会
石化協 森川宏平会長

2019年の新春を迎え、謹んで新年のお喜びを申し上げますとともに、年頭にあたりご挨拶申し上げます。
 初めに、昨年を振り返りますと、いくつかの甚大な被害をもたらした自然災害の発生がありました。6月の大阪北部地震、6月末から7月初めの西日本豪雨が続き、9月に入ると近畿地方に上陸した台風21号と和歌山から本州を縦断した台風24号により大きな被害を受けることとなりました。さらに、9月の北海道胆振東部地震は甚大な人的被害と共に、日本最初のブラックアウトを引き起こし、北海道経済は大きな打撃を受けました。被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに一日も早い復興をお祈り申し上げます。

さて、世界経済をみますと「米国第一主義」を掲げるトランプ政権と中国や欧州など世界の主要国との政治・経済摩擦が顕著となり、さらに中東や北朝鮮情勢に起因する地政学リスクは、株式や原油価格の乱高下をもたらしています。また、12月に発生したフランスでの反マクロン政権に対するデモの暴徒化はポピュリズムの危うさを裏付けており、これらの混乱が世界経済の下振れを引き起こすことを危惧しております。特に、米中の貿易摩擦は単に二国間だけの問題ではなくサプライチェーンが繋がる各国に影響が出てきており、スマートフォンの関連分野や自動車販売についても陰りが出始めてきております。
一方で、国内に目を転じれば、今年10月の消費税率引き上げに伴う消費の冷え込みが懸念されるものの、逆に消費税実施前の駆け込み需要や、来年の東京オリンピック・パラリンピックの準備も佳境に入り、これに伴う需要拡大も見込まれるところです。

国内の石油化学業界の状況をみますと、底堅い国内需要にも支えられ比較的堅調に推移しております。特に、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降60ヵ月連続で90%超を維持しており、しかもここ3年をみれば、ほぼ95%を超えている状況です(昨年11月までの実績)。しかしながら、設備の高稼働が継続しているときこそ、安定供給責任を果たすため、これまで以上に保安・安全の確保が重要となってきており、また、エチレン装置の高経年化が確実に進展する中で国際競争力を維持・向上していくためには、これまで以上に様々な努力を傾注していくことが不可欠となっております。

このような状況下において、当協会としては石油化学業界の持続的発展に向け、以下の諸課題に積極的に取り組んでまいる所存です。
1.保安・安全の確保
保安・安全の確保は、最重要課題であり、事業を運営していく上で最も重要な基盤であることは言うまでもありません。この理念を踏まえ、保安・安全に対する以下の取り組みを行ってまいります。
(1) 経営層の強い関与
保安・安全の確保、向上のため、現場に最も近い経営層である事業所長による意見交換会を引き続き開催し、また、本年は、保安への取り組みを強化するため、経営層自らも参加している2015年作製の安全メッセージビデオの見直しの検討を開始致します。
(2) 安全文化の醸成
保安推進会議・保安表彰、事故事例巡回セミナー等により、トラブル情報・
経験や、保安の取り組みに関する情報の共有化、危険に対する感性の向上等を
進めてまいります。
また、「産業安全塾」についても、引続き充実させ、人材育成にも努めてま
いります。
(3) IoT、AIの活用
国の実証事業として2017年より検討を継続してきた「保温材下配管外面
腐食(CUI)の予測精度向上」(IOT活用事業)の取り組みについて、2
019年より自走段階に入り、CUI予測モデルのさらなる精度向上と活用実
証を図ってまいります。
 さらに、IoTやAIなどの様々な新技術の適用可能性について検討を進め、
操業の安定化、保安の向上に努めてまいります。
(4) 産業保安に関する行動計画については、前年度のフォローアップを行い、
2019年度の行動計画を策定します。

2.事業環境の基盤整備
 我が国の石油化学産業が存在感をもち、持続的発展を遂げていくため、事業環境
の基盤整備に取組んでまいります。
(1) イコールフッティング
グローバル化が進展する中で、厳しさを増す国際競争に打ち勝ち、持続的発
展を遂げていくためには、諸々の税制・規制の面でのイコールフッティングが
極めて重要です。引続き、法人実効税率引下げ等の税制改正や規制改革の実現
に向け積極的に取組んでまいります。
(2) 定期修理工事の課題等に関する検討
昨年度、定期修理工事に係る課題を明らかにし、解決に向けた取り組みを検
討しましたが、この検討結果については、経済産業省へ提出すること等により、
当面、所期の目的を達成しました。このため、今後は本検討結果の内容につい
て関係省庁、関係団体等に対し説明を行っていき、必要に応じて改善要望を行
う等、課題の解決に向けた活動を行ってまいります。

3.グローバル化対応の強化
 米国におけるシェール革命の進展により、本年以降、いよいよその直接的な影響
がアジアに及んでまいります。また、世界の石油化学産業の地図が描き換わる一方、
人口減や製造業の海外移転等による内外需給構造の変化に伴い、我が国石油化学産
業においては更なるグローバルな展開が求められております。
(1) アジア石油化学工業会議(APIC)
アジアの石油化学企業が相互にコミュニケーションを図り、その健全な発展に
貢献するための場として、アジア各国の協会と連携を図り、毎年アジア石油化学
工業会議(APIC)が開催されております。本年のAPIC2019は5月に
台湾協会の主催で開催される予定です。メンバー協会と協力しながら成功裏に向
けて取り組んでまいります。特に、2017年の札幌大会から採用された「環境
分科会」が定着してきた感があり、この充実に向け協力してまいります。
(2) 海外の情報収集等
海外の石油化学情報、原料関係、国内外の需給構造の変化や、石油化学産業を
巡る国際動向に関する情報収集等を行い、また、会員会社のニーズを踏まえ、テ
ーマを設定し、講演・意見交換等を行ってまいります。
(3) 環境問題
グローバルな環境問題として認識されている廃プラスチックの問題について、
当協会を含む5団体を共同事務局とし、化学会社をメンバーとする「海洋プラス
チック問題対応協議会」を昨年9月に発足し、アジア新興国各国でのインフラ整
備に対する働きかけを行うこと等を取り進めていくこととしており、当協会も同
協議会事務局の一員として、APICの会議の場などを通じて積極的な働きかけ
を行ってまいります。

以上、三点に絞って述べさせていただきましたが、ほかにも、各種刊行物の発行やマスコミ等のステークホルダーへの情報発信といった幅広い広報活動等も展開してまいります。

 石油化学産業は、日本の「ものづくり」におけるサプライチェーンの出発点であるとともに、自動車・電機等の分野での先端技術開発に不可欠な機能性素材を創出しております。石油化学産業の強化は、日本の「ものづくり」の強化につながります。会員各社ともその自覚と誇りを持って事業の発展、競争力の強化に取組んでいるところです。

今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
最後に、日本経済の着実な回復と更なる発展を願うとともに、関係各位のますますのご活躍とご健勝を祈念し、新年のご挨拶といたします。                    
以 上