2019年02月19日
(追想)住友化学の二人の国際派 経営者
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:住友化学

住友化学がシンガポールとサウジアラビアに二つの海外プロジェクトを完成させた裏には、二人の国際センスに優れた経営者がいたことが大きい。

一人は言うまでもなく米倉弘昌前会長(元社長)だ。昭和40~50年の外国部長時代に長谷川周重(元社長・会長)さんのお供をしてよく海外を飛び回っていた。「先週、ギリシャへ行ってきましたよ。いえ、一人です」。
長谷川さんは化学とは関係ないが、日本ギリシャ協会の会長をしていた。何か行事があったらしくご名代として出席したようだ。米倉さんは当時から英語力では住化でナンバーワンといわれていた。「たいへんな歓迎をうけ、めんくらってしまいました。でも大勢の人に会えました」。
どこへでも出かけ誰とでも気軽に話し合える。こうしてつかんだ経験、感覚は、のちの一兆円の「サウジ大プロジェクト」につながったにちがいない。
「原料価格が違います。気がかりな点ですか? あるといえば全部ですよ」。と言ったあと、「でもやろうと思えばできますよ」と笑った。いつも前向きでパワフル。
経団連会長の重責もみごとに果した。

もう一人はシンガポール計画を担った香西昭夫(元社長・会長)さんだ。
いくつもの困難な国際交渉をスマートにまとめあげた。現地に駐在しプロジェクトの進行を見守った。雑談のなかで俳句の話がでた。「あの国は年中暑いし、四季がないから俳句には向かないのでは」というと、「いや、四季はありますよ。ホット、ホッター、ホッテスト」と軽妙な答えが返ってきた。名門の出にふさわしく明るい。たいへんな読書家だった。あるパーティで「いま、おもしろい本を読んでいるんだ」と、書名や出版社を教えてくれた。やや政治向きの本だった。さっそく読んでみようと思っていたらまた顔を合わせた。「あの話は内緒にしてね。差し障りがでると困るから」。まわりに配慮する気遣いもみせた。

香西さんが日本の床の間に似合う気品のある花だとすると、米倉さんは国際会場のシャンデリアに映える豪華な花といえるだろう。米倉さんの「お別れの会」は20日、帝国ホテルで開かれる。(M.K)