「目指すは“プライムソリューションパートナー”の実現」

 

プライムポリマー社長・岩淵滋氏

 「一言で表せば、当社の基本理念である“全ての顧客からプライムソリューションパートナーとして評価され、信頼される企業となること”の実現だ」。岩淵新社長に“目指す企業像は”と水を向けたところ、返ってきた答えがこれだった。
 
 「プライム、すなわち最上級の製品、技術、サービスを安定的に顧客に提供し続けることで揺るぎない信頼をかち得ていく。むろん、ソリューションの提供の対象は全世界の顧客を指す」という。
 
 今後ポリオレフィン業界は、08年後半からの中東勢の大増産もあり、かつてない厳しい生存競争の波に巻き込まれようとしている。「だからこそ、多くの顧客からプライムソリューションパートナーとしての評価をきちんと得ていきたい」と、力を込めた。

——プライムポリマーは、05年4月の発足当初から「プライムソリューションパートナー」の実現を目指してさまざまな経営戦略を展開してきました。進捗の度合いは。

 「プライムソリューションパートナー」の実現にはグローバルな視点と、顧客と共に歩むという「二つの視点」が不可欠だ。当社は、この考えをベースに経営の「三つの基本戦略」として(1)コスト構造の改革(2)ボーダレス化に対応した基盤の強化(3)差別化分野への集中、を掲げて実現に取り組んできた。

 また当社は、三井化学と出光興産のポリオレフィン部門の統合企業なので、シナジー効果に対する期待にきちんと応えていくことも重要だ。このため「四つのシナジー」すなわち合理化、構造改革、開発活動、新しい企業文化の確立、という四点のシナジーの発揮にも全社員で懸命に挑戦してきた。

 幸い、着実に実績が上がりつつある。例えば「差別化分野への集中」では、すでに全体に占める付加価値分野の構成比を50%程度まで引き上げるのに成功している。
 
 「コスト構造の改革」では、メタロセン触媒によるLーLDPE「エボリュー」の設備の年産4万トンの増強や物流等SCMの合理化で狙い通りの成果を上げている。
 
 結果として、当初の目標を上回るペースで合理化効果を上げつつある。06年度は目標の40億円を16億円上回る56億円の効果を上げた。07年度はそれにさらに24億円上積みできる見通しだ。設立時に掲げた、08年までの4年に合計100億円の合理化効果を上げるという目標は、十分にクリア可能となっている。
 
 一方、「ボーダレス化対応」では、自動車用PPコンパウンドのグローバルな生産拠点の拡充が順調に進み、現在、日本、タイ、北米、中国、欧州の五つの拠点に合計年産64万7,000トンの設備を保有するに至っている。いずれも高稼働を維持しており増設に次ぐ増設を重ねている状況だ。 

——業界では、中東勢が出てくる09年以降の世界のポリオレフィン需給バランスを警戒する声が高まっています。どう見ますか。

 需要自体は今後も着実に伸びていくと見ている。特にアジア地域では中国とインドの経済成長が大きく寄与し、他の地域以上に順調な伸びを続けると期待している。
 
 だが、08年下期から中東で大型ポリオレフィン設備が相次いで完成し稼動入りする見通しなので軽視はできない。おそらく2010年から2011年がポリオレフィン各社にとって最も厳しい事態になると思う。

 だからこそ、いま挙げた「基本戦略」をより深化させていくことが必要だ。それを怠ると原料価格面で圧倒的に優位な中東勢に市場を席巻され、当社とて存続の危機に見舞われることになるだろう。

——具体的にどんな手立てを考えていくのか。

 ポイントは、中東品の影響を受けにくい付加価値分野の構成比をいかに引き上げていくかだ。付加価値分野の構成比が50%程度では満足していられない。目指すべきは70%ラインだ。

 「エボリュー」の付加価値分野は、すでに70%程度に達しているが、中身については一層の改善が必要で、新たな用途開発を進めていかないといけない。将来は海外にも大型プラントが持てるようにしたい。

 PPの場合も、付加価値分野の構成比の向上は極めて重要だ。ついてはメタロセン触媒の採用で低温シール性に優れたフィルムや高融点のレトルト用途等向けの高付加価値グレードを可及的速やかに上市していきたい。08年央にもサンプルを試供できるようにしたいと考えている。

 PP事業でもう一つ重要な課題は、国際競争力強化のためのビルド&スクラップのタイムリーな実現だ。汎用品と差別化品の両方を効率よく生産できる大型プラントを新設し、生産効率の低い既存の小型プラントを廃棄する。現在そのフィジビリティスタディーを実施中だ。できれば2012年に年産20ー30万トンクラスの新プラントを完成させたい。

——PPでは自動車用コンパウンド事業の国際展開に積極的に取り組んでいます。ベースポリマーでも海外進出を考えているのでは。

 わが国の自動車メーカーの積極的な国際展開に合わせて、コンパウンドの生産拠点はもっと拡充していく必要がある。このためインドに新たな拠点を設けるほか、既存拠点の設備能力も毎年増強し、2010年には全世界で年間80万トンの生産体制を確立するように持っていきたい。ただ、ベースポリマーの海外進出についてはまだお話できる段階にない。

——課題は、やはり高密度ポリエチレン事業の強化。期待のメタロセン触媒による新品種の市場開拓はどのていど進んでいますか。

 当社はHDPEについても国内では比較的大きいといえる規模のプラントを3基保有しているので、コスト面で劣位にあるわけでは決してない。しかし、採算の確保が容易でなく将来の成長が期待しにくい汎用フィルム用途への依存度が高い点は大きな問題だ。現在の需要構造のままで発展を期すのは所詮無理というほかない。

 そこで、現在汎用フィルムに替わる新しい市場を開拓していくためメタロセン触媒による新グレードの開発に懸命に取り組んでいる。
 
 幸い、複数の大手ユーザーから高い評価を得ることができ、展望が開けつつある。まず小型ブローからスタートし、そのあと順次配水用大口径パイプや多層フィルム用などの高機能品を市場に投入していく方針だ。
 
 だが、のんびり構えている余裕はない。一定期間内、できれば4年以内に既存のプラントの一つの2分の1をメタロセン触媒による新グレードに切り替えられるようにしたい。

——そうなれは、大競争時代への備えも万全になると。

 いや、これまで挙げた課題を全部クリアしなければ、世界で存在感が認められる企業にはとてもなれない。当面の目標は、コスト面でも品質面でも、少なくともアジアで強力な存在感のあるポリオレフィン企業になることだが、それだって容易ではない。

——新社長として、今、社員に一番言いたいことは。

 明るくて風通しがよく、全ての事柄がスピーディに決定し、効率よく実行されていく・・・。これからの時代に生き残っていくのは、そういう社風を持った企業ではないだろうか。当社もそういう会社であってほしい。社員の一人ひとりが働らき甲斐を持ち、プライムポリマーのためにベストを尽くす、ぜひそういう会社であってほしいし、そうしたいと思っているところだ。