ポリプロ業界の現状と課題

グランドポリマー 社長

吉浦 春樹 氏

 H.YOSHIURA

 「国際競争はこれから激しくなる。私たちの周辺にも、もうひと揺れあるかもしれない」と吉浦社長。三井化学と宇部興産の合弁PP(ポリプロ)専業会社として誕生して4年。生産規模は70万トンと、国内トップクラスだが、海外には300万トンを超えるところもあり、国境を超えた提携や買収によって、巨大化は進む一方だ。さて、どう対抗していこうとしているのか、課題は何か、きいてみた。

━国内景気が回復してきて、PPの需要も戻ってきたのでは。

 PPの国内需要は、最盛期の97年には年間250万トンあった。今、ようやくその水準に戻りつつあるといえるだろう。ただ、需要は戻ってきても、輸入がこのうち20万トンもある。2年前までは5〜6万トンしかなかったから、国内販売量は245万トンぐらいあった。今は同じ250万トンでも販売量は230万トンしかない。日本のPPメーカーは、輸出用も含めて300万トン近い生産をしているが、国内向けの稼働率でいうと、80%〜85%にしかならないというのが現状だ。

━しかし国内でもまだ需要の伸びる余地はありそうです。

 PP自体の成長性はもちろんまだある。他のプラスチックの中には成熟期に入ったものもあるが、その点でいうとPPは「後期成長期」といっていい。大きな伸びはともかく、新しい需要分野はまだ出てきそうな気がする。

━東南アジアなどの輸出市場では韓国品や台湾品がずい分伸びています。日本は劣勢にあるといえませんか。
 いや、アジアの新興国はフルコストで、つまりきちんとした値段で輸出していないと思う。お互いフルコストで出すなら、勝つ自信はあるのだが、彼らは原料プロピレンが消化できればいい、PPは比例費に少し上乗せして出せばいいといったところではないのか。私たちはそういう売り方はしたくない。従って価格では対抗のしようがない。もしもシェア維持に走ってしまうと、とても健全な利益などは出てこない。私たちメーカーは、ただものをつくるだけでなく、一方では研究開発もやって、より品質のいいもの、新しいものを開発していかないといけない。より付加価値を高めていくというのはそれこそメーカーの使命だと思う。
━国際競争力の確保、強化は業界共通の課題です。

 うちの会社でいうと、工場は千葉と、大阪の堺、高石にあって、その他と合わせて能力は年産70万だが、プラントは9系列からなっているので、平均すると1系列当たり7,8万トンにしかならない。プラントは大型化が進み、いまや1系列20万トンの時代だ。われわれの工場は償却が進んでいるといっても、このまま国際社会の中で生き残れるかとなるとやはり悲観的にならざるを得ない。

 当社は7月、社内に将来のあり方を考える「Gプロジェクト室」という組織を設置した。長期生産体制のあり方、あるいはそのための戦略はどうあるべきかを年内いっぱい検討してほしい。さっき言った、稼働率85%の中でどうやっていけばいいのかのシナリオを考えてほしいといっている。

 同じPPでもグレードの種類は汎用タイプのものから特殊な、高付加価値のものまで何百とある。新しいお客のニーズに合ったものを、それぞれのプラントのうちどれをどのように使っていけば、一番効率よく生産できるかといったことも、もっと考えていきたい。まあ、そういったことができるのも、当社が3社でアライアンスを組んだからであって、もしそれをやっていなかったらとてもできなかっただろう。
━国際競争が激化していく中で日本のメーカーはどうあるべきと。

 ご承知のように海外コンペティターはどんどん巨大化している。モンテルだけではなく、ヘキストとBASF、BPケミカルとアモコ、それにエルフも動いている。このように海外メーカーがより巨大化していく中で、日本は250万トンの需要に対して、いまのようにメーカーが7社もあっていいのか、いままたナフサが高騰して、各社経営に苦しんでいる。何とかしないといけないという気持ちはみんなもっているし、いずれは業界にも、もうひと揺れあるのではないかという気はする。私の感じでいえば、国内メーカーの数は4社から5社ぐらいになるのが一番いいと思う。当社はスタート前から、一緒にやりたい人にはいつも門戸を開けていますといってきた。地縁とか原料関係を軸に、新しい展開があればいいな、と思っているところだ。

━グランドポリマー自体の合理化計画はどこまで進んでいますか。

 合理化には随分力を入れてきた。生産体制とか人員とか2000年3月を目標とした計画は達成しつつあるし、銘柄ももともとは700種類からあったが、目標の300まで減らせそうだ。

だが統合効果もそろそろ出つくしてきた。国際競争力をつけるのが目的だったが、ここでナフサが上がってまた水面すれすれといういまの状況からすると、また次のことを考えないといけない。内外とも競争が激しくなる中でもう一段何かやらないといけないとは考えている。

━海外展開にも力を入れていますね。
 海外展開はコンパウンドが中心だが、米国ではATCとCTTを統合し、当社が支配権をもって運営できるようにしようと、いま交渉中だ。来年4月1日の合併を目標として検討を進めている。欧州FMTも三井化学の所有株式を当社が買い取り50%株主となるよう話し合っている。来年3月には実現するだろう。タイではサイアムグループとのJVでGSCをもっているがこれは非常にいま好調だ。昨年は経済混乱のため稼働率が40%にまで落ちたが、今年は100%以上の稼動をみせ、相応の利益が出るのではないかと楽しみにしている。自動車向けに需要の増加が見込まれるので、いまの8,000トンから1万2,000トンにもう1系列増やす計画だ。上海のコンパウンド工場も、他の樹脂が振るわない中でPPががんばり、生産量を2,000トン強と増やし、貢献している。海外では各社よくがんばってくれている。
━国内ではPPの値上げを交渉中ですが、進捗状況は。
 PPの国内の値段は、ナフサが下がったときにはすぐ下がるのに、上がったときにはなかなか上がらず値上げに時間がかかる。私たちにはナフサやプロピレンの値上げは待ったなしでくる。今ようやくその点のご理解をいただきつつあるところだ。一日も早い決着を願っている。