「中期経営計画」策定と、ポリオレフィン事業の将来

 

グランドポリマー社長

吉浦 春樹 氏

H.YOSHIURA

 三井化学と宇部興産両社のPP(ポリプロピレン)共同事業会社グランドポリマーが2001年〜03年の中期経営計画を策定した。三井化学が住友化学と歴史的な事業統合の話し合いを進めている中での中期計画とあってその内容に注目が集まっているが、吉浦社長は「ポリオレフィン事業ではわれわれも住友化学も目指しているものは同じ、内容的には矛盾はないと思う」ときっぱり。PP業界の現状と将来のあり方をきいてみた。 

PP業界、アライアンスが進んでいますね。

  当社がスタートしたのはいまから5年半前の1995年10月だったが、あの当時PPメーカーは国内に14社あった。その後三井東圧化学(当時)がうちに入り、日本ポリオレフィン、日本ポリケムと、アライアンスが進んで、いまメーカーは半分の7社に減っている。ここまでを第1次というなら、これから次の第2次の統合が始まる。三井、住友の統合、出光石油化学とトクヤマの提携、チッソもどこかと一緒になるといううわさだ。すると、いまの7社は4社になる。日本ポリオレフィンはPP部門が分かれていまサンアロマーになっているが、半分外資が入っているので、国内だけでみると実質3.5社ということになる。14社あったものが4分の1の3.5まで減るのだから、まさに激動、激変といってよい。私はこの大変な時期にPPの仕事に携わらせてもらったと思わずにいられない。

━メーカー数が減って、競争力がどこまでついたのか・・・。

  問題はそこだ。どのグループも何社か一緒になっただけで、S&B(スクラップ・アンド・ビルド)はどこもやっていない。単なるジョイントベンチャーに過ぎない。当社自身この5年半、設備には全然手をつけていない。合理化はやってきたが、それだけで競争力はつくものではない。各社皆同じだと思う。3.5社まで統合できたのは必然だが、もっとやらないと、国際的に生き残れないのではないか。

設備能力に過剰感はありませんか。

  国内のPP生産能力はいま300万トン強で、それほど余っているという感じはない。国内需要が255〜6万トン、この中には輸入品も含まれているので国内向け出荷量でいうと240万トン前後だろう。それに輸出が50万トン位あるので設備バランスはほぼとれていると思う。2004年から関税が下がるので、輸入が増えてくれば問題が出てくる可能性はある。

━海外には大型プラントがどんどん建っています。グランドポリマーもS&Bを考えていたのでは?

 そう。今度完成するエクソンモービルのプラントは1系列で27万トン、アトフィナは38万トンときいている。当社は3工場合わせて能力は約70万トンだが、1系列当たり平均だと8万トンしかない。それも1960年代にできた古いプラントが多い。系列が多ければ運転要員もそれだけ必要になり製造コストは高くつく。だが小さいプラントにも少量多品種生産に適しているといった長所はあるから何でも大型化すればいいというものでもない。そこで当社は大型のコスト競争力の強いプラントと、機能性の高い樹脂をつくる中規模のプラントの双方をもちたいと考えている。

━ところで今度の「中期経営計画」、重点はどこにありますか。

  大きな戦略は3つあって、1つはこの10月から三井化学と住友化学がポリオレフィン事業で全面統合する。そこで統合効果を最大限、最速のスピードで出していかなければならない。いかにスムーズに統合し、その効果を出していくかだ。2つ目は、PPの競争力をつけるための新プラント建設だ。S&Bを前提に1系列20万トン規模の新鋭プラントを建設する。計画は以前からあったが、いよいよこれに着手する。すでに青写真もでき上がっている。戦略の3つ目は住化と一緒になれば、現在住化がアメリカとシンガポールにもっている海外プラントと一体的に運営されることになる。そこで国内に続いて海外にもう1つ新しいプラントをつくりたい。

━住化や三井、宇部などの関係会社にはどんな説明を。

 もちろん親会社両社には去年の暮説明した。住化にも考えは伝えてある。私たちがかかえている課題は住化も同じだし、目指している方向、目標などの点でも認識は一致している。その点に矛盾はない。むしろ当社がやろうとしていることは、統合に向けた準備そのものとみていただいていいのではないか。

━住化と事業統合したあと、どんなポリオレフィン会社になるのでしょう。

  それは住化と三井両社で話し合っていることなので、まだ何とも言えない。しかし統合の効果が大きいことは間違いない。PPに限ってみても、生産規模は日本、アメリカ、シンガポール合わせ170万トン、世界第4位のメーカーになる。製造、販売、研究あらゆる面で海外の大手と肩を並べられる。世界のトップクラスと互角に競争できる体制になると思う。

2001.03.05掲載