理研、脱水素型クロスカップリング 開発成功
理化学研究所 開拓研究本部の袖岡幹子主任研究員らの研究グループは22日、位置多様性・脱水素型クロスカップリング反応の開発に成功したと発表した。

同研究成果は、脱水素型クロスカップリング反応による位置異性体(ベンゼン環上の置換様式が異なる異性体)の選択的供給に貢献すると期待できる。

酸化反応は、化学産業プロセスの30%以上を占める重要な反応。しかし、酸素分子を酸化剤として用い、異なる二つの炭素-水素結合を切断し、新たに炭素-炭素結合を形成する脱水素型(酸化的)クロスカップリング反応は、反応性や選択性の制御が難しく、成功例は限定的だった。

今回、研究グループは、オキシインドールあるいはベンゾフラノン二量体のホモリシス(注)により生じる持続性ラジカルを鍵活性種として用い、カテコール類との位置多様性・脱水素型クロスカップリング反応を実現した。

新たに見いだしたラジカル・酸/塩基の協奏的反応では、従来エネルギー的に不利と考えられてきた吸熱反応が進行した後に、酸化的芳香族化を経てより安定な最終生成物へと変換されることが明らかになった。
今後、新しい反応および触媒を開発するための有用な設計指針となる。

同研究は、科学雑誌「ACS Catalysis」に近日掲載の予定。


◆ホモリシスとは :二つの電子で構成される共有結合の開裂の様式の一つで、生じる二つのフラグメント(AおよびB)に電子が一つずつ分配される。


理化学研究所:ホームページ
https://www.riken.jp/press/2020/20201022_1/index.html

戻る