| 2004年06月24日 |
| 塩ビ業界以外のFR(CR)プロジェクト |
(1)はじめに 前章では塩ビ業界が深い係わりを持つFRプロジェクトをいくつか紹介した。しかし最近は、塩ビ業界が直接の結びつきを持たない分野でも、FRの大型設備を設置して廃プラスチックの有効利用に乗り出すところが増えてきている。 その多くは、塩ビを分別することなく一括処理していくシステムを採用している。こうしたプロジェクトに対しては、国や地方自治体が補助金を交付して積極的に支援する傾向が顕著となってきており、この点もFRを巡る新たな動きの一つとして注目されるところだ。 “廃プラスチック事業を長期にわたって安定的に展開していくには、多種多様な廃プラスチックを一括処理して高効率かつ多元的に有効利用していけるプロセスが必要であり、ついては化学テクノロジーをフルに活かしたFR手法を採用していくのがベスト”との考え方が関係者の間に急速に広がってきたことを雄弁に物語る現象と言える。 (2)代表的なプロジェクトの現状 [1]イーユーピー社の【加圧二段ガス化プロセスによる廃プラスチック有効利用プロジェクト】 【プロセスの概要】 塩ビを含む各種廃プラスチックを破砕したあと直径約60ミリメートル、長さ約150ミリメートルの円筒形のRDF(固形燃料)に成形し、次いで、600℃〜800℃の低温ガス化炉と1300℃〜1500℃の高温ガス化炉の二つの炉で構成される二段ガス化プロセスで熱分解と部分酸化を行って水素と一酸化炭素を生成するというもの。「加圧二段ガス化プロセス(EUP)」がプロセス名。 得られる水素・一酸化炭素は、アンモニア等化学製品の基礎原料として、あるいは複合発電用燃料や燃料電池として利用できる。無機物は水砕スラグとして回収してセメント等に、また塩素は回収して肥料の一つの塩化アンモニウムとしてそれぞれ利用が可能。高温で熱分解し、そのあと瞬時に200℃に急冷するのでダイオキシン類の合成・再合成の心配がない点も特徴の一つとされる。 【開発の歩み】 宇部興産と荏原製作所がNEDOの委託を受けて共同で技術を開発、99年11月に山口県宇部市に年間処理能力1万トンの実証プラントを建設して技術の仕上げに着手、そして00年9月に狙い通りの技術を確立できたとして実験を終了した。それ以降は両社が折半出資会社「イーユーピー」を設立して商業運転中。最終技術の確立に当たってはプラスチック処理促進協会が協力した。 【現状】 容器包装リサイクル法に沿って自治体が分別収集する各種プラスチック製容器包装を主たる対象にガス化し、化学原料として有効利用している。現在の処理能力は年3万トン。 [2]昭和電工の【使用済みプラスチックのアンモニア原料化プロジェクト】 【プロセスの概要】 各種の廃プラスチックを1300度C以上の高温でガス化し、ガス中の塩素はアルカリで中和してソーダ電解原料として、また、硫黄は重亜硫酸ソーダ原料としてそれぞれ場内でリサイクルしていく。不純物の金属類は還元状態で回収して有価物として販売、そしてその結果得られた精製ガスはアンモニア合成の原料として活用していく、というのがプロセスの概要。採用プロセスのガス化部分は前述の[EUPプロセス]。 【プロジェクトの概要】 容器包装リサイクル法に沿って分別収集されるプラスチック製容器包装と川崎市内ならびに周辺企業等から排出される産業系廃プラスチックを原料にして、1日当たり195トンのプラスチックから同175トンの液化アンモニアをはじめとする化学品を製造していく、というのが事業のあらまし。 【設備の概要】 前処理設備とガス化設備とで構成。このうちの前処理設備は、搬入された廃プラスチックから金属類を除去してガス化がスムースにできるように破砕し減容成形(RPF化)する役割を持つ。 設置場所は、川崎市扇町の昭和電工川崎事業所内。設備の特徴は(1)回収プラをガス化によって完全なケミカルリサイクルすること(2) 回収プラを1,300℃以上の高温でガス化処理するので混入している塩ビを分別する必要がないこと(3) ガス化処理されたガス中の塩素はアルカリで中和し、ソーダ電解原料として事業所内で利用すること(4)硫黄は硫黄誘導品原料として事業所内でリサイクルすること(5)不純物の金属類は還元状態で回収、有価物としてリサイクルすること(6)精製された水素ガスはアンモニア合成の原料とすること、の6点。 設備の建設所要資金は約84億円。うち37億3,700万円は、国と川崎市からの補助金で賄われた。同プロジェクトが経済産業省の「環境調和型地域振興施設整備費補助事業」の対象として認定されたことによる。 【プロジェクトの今後の展開】 昭和電工が同設備の本格稼動に入ったのは今年4月。現在は順調に稼動率が上昇中。同社では、これまでナフサやコークス炉ガスさらには石油系オフガスに依存してきたアンモニア原料の半分を同設備による合成ガスでカバーしていく。 同社川崎事業所は東日本唯一のアンモニア生産拠点で、生産能力は年19万7,000トンと大きく、販売シェアは業界トップにランクされている。そうした同社が同プロジェクトの本格展開によって、コスト競争力の強化と環境負荷の低減というかねてからの二つの課題をどのようにクリアしていくかが注目される。 [3]東京臨海リサイクルパワーによる【リサイクル発電事業計画】 【計画の概要】 廃プラスチック類等の産業廃棄物をガス化し、それを燃料とする高効率発電事業をスタートさせるというもの。東京都の「スーパーエコタウン事業」の一つに認定されている。耐腐食性のボイラーの採用によって塩ビも分別せず一括処理できる設計となっている点が注目されるところ。感染性医療廃棄物も処理していく。 事業主体の「東京リサイクルパワー株式会社」は、東京電力70%、東電環境エンジニアリング10%、清水建設10%、荏原製作所5%、オリックス環境5%のジョイントベンチャー。資本金は4億9,000万円。設立は平成14年12月19日。 建設する設備は、産業廃棄物を対象とする日量約275トン能力の流動床ガス化溶融炉2基と、感染性医療廃棄物を専らの対象とする同50トン能力の専焼炉2基。発電規模は約2万5,600キロワット。発電効率は20%以上。 建設所要資金は約300億円の見込み。うち3分の1が経済産業省や環境省、さらには東京都から交付される補助金で賄われることになりそう。 設置予定地は、東京都江東区青海の中央防波堤内側埋立地の約2万9,000平方メートル用地。着工は今年(平成16年)7〜8月となる見込み。完工予定は18年3月。商業運転開始の予定は18年8月。 【流動床ガス化溶融プロセスの概要】 持ち込まれる産業廃棄物(全体の70〜80%が廃プラスチックと想定)をガス化炉に投入して500〜600℃で蒸し焼きにし、各種不燃物を取り出したあと旋回溶融炉に入れて1,200〜1,450℃の高温下で3次にわたって燃焼させスラグを取り出した後に廃熱ボイラーに送り込んで発電に利用するというもの。利用後は減温塔で急冷してダイオキシンの再発生が未然に防がれる仕組みとなっている。 【同プロセスの特徴】 (1)安全な構造となっていること=可燃物を炉外に排出しない構造なので爆発の危険性がない。また機械的可動部がないためトラブルの発生要因も少ない。 (2)ダイオキシン類の排出量が極めて少ないこと=高温焼却なのでダイオキシン類をほぼ完全に分解できる。また、起動停止時を除いて化石燃料を必要とせず余分なCO2の発生を抑制もできる。 (3)リサイクルに優れていること=低空気比運転(少ない空気で燃焼させる)ので、排ガス損失が少なく熱効率が高い。また、金属類を未酸化で回収できる、不燃物の排出性能が高い、スラグ化率が高く質の良いスラグが得られるといった強みも併せ持つ。 (4)発電効率が高いこと=最初ガス化が500~600℃と高温でしかも4メガパスカルという高圧下で行われるので発電効率が通常のごみ発電のケースを大きく上回る20%以上となる。 【事業の持つ意味】 首都圏では初めての大規模ガス溶融発電施設の建設なので、産業系廃プラスチックの処理と有効利用に寄与するところが大きいと期待される。東京臨海リサイクルパワーの石渡一成取締役は「本格稼動すれば、現在埋め立て処理されている塩ビ管や壁紙などのプラスチック製建築廃材や事務系廃プラスチックの多くがエネルギー利用できることになり、循環型社会の実現に少なからず貢献できるはず」と力説する。 <むすび> ここまで取り上げてきた廃プラスチックのFRを巡る動きは、言うまでもなく、最近の産業界の間で特に活発になってきたFR活動のごく一部を表すにすぎない。一方、地方自治体による廃棄物発電もここにきて一段と加速がついてきており、それを含めた廃プラスチックのFRの絶対量は文字通り急ピッチで拡大していると言って過言でない。プラスチック処理促進協会が03年12月にまとめた「プラスチック製品・廃棄物・再資源化フロー図(2002年版)」のデータからも、そうした実態の一端をうかがい知ることができる。 同協会のデータによると、廃プラスチックのFR、ガス化や高炉原料化などが実際にスタートしたのは96〜97年からであり、97年におけるガス化/高炉原料化処理量は1万トンであった。 また、同じ年の固形燃料化による処理量は5万トン、廃棄物発電による有効利用量は147万トンであった。 5年後の02年のFR量は、ガス化/高炉原料化が25万トン、固形燃料化が32万トン、廃棄物発電が205万トンの合計262万トンとなっている。5年間の伸び率は71.2%ということになる。なかでもガス化/高炉原料化の拡大ぶりが特に目を引く。 また、廃棄物発電による廃プラスチック処理の伸び率も39.5%とかなり高い。しかも廃棄物発電に踏み切っている最近の自治体の多くは、塩ビ製品を特に分別することなく一括処理している。多摩川衛生組合のごみ焼却施設「クリーンセンター多摩川」もその一つだ。 図:クリーンセンター多摩川 クリーンセンター多摩川が立地するのは、都下稲城市郊外の約2万2,400平方メートルの敷地内。竣工は98年3月。焼却能力は3炉合計1日当たり450トン。ただし1炉は予備のローテーション炉であり、実稼動は2炉合計290トンとのこと。 蒸気タービン方式の最大発電能力は6,000キロワット。余熱は場内で給湯・冷暖房に利用されるだけでなく、1.2キロメートル先の「稲城市立病院」に冷暖房用に供給されている。 門真志郎・同組合事務局長によると、同施設の持つ特徴は (1)減温反応塔やろ過式集じん機(バグフィルターシステム)によってHCLを最大でも25ppm、SOXを20ppm以下に抑えるなど徹底した公害防止措置が取られていること (2)ごみのエネルギーを蒸気として回収し、蒸気タービン発電機によって最大6,000キロワットの発電を行うと同時に、余熱を施設内外で有効利用できるのでごみのエネルギー変換効果が大きいこと (3)ごみの中に含まれる鉄やアルミなどを回収して再資源化できるシステムになっていること、の3点に集約できるという。 塩ビ廃棄物は邪魔にならないのかと尋ねると「焼却前にごみ全体を適正に攪拌してすべてのごみを均等かつ効率よく焼却するようにしているのに加え、HCLをバグフィルターシステムや消石灰の吹きつけ処理などで10ppmくらいまで抑えるようにしているので何ら問題がない」と答える。 ちなみに、注目のダイオキシン類の平成14年12月〜15年1月の測定結果は、1立方メートル当たりの排出ガスが0.0000021〜0.00011ng-TEQとのこと。周知のように、国の基準は1ng-TEQである。 02年度の発電電力量は3,816万9,785キロワットで、その67%を場内で利用、残り33%を東京電力に販売した。売電収入は9,695万8,299円であった。また、稲城市立病院への温水の提供によって年間4,500万円の経費の削減が実現できたとも言う。エネルギー資源の乏しいわが国にあっては、まさにごみ処理のモデルの一つと言えそう。 こうした高度エネルギー利用のごみ発電施設の広がりもあって、最近の市民の間には、ごみのエネルギー変換の持つ国民経済上ならびに環境保全上の効果の大きさを率直に評価する向きが着実に増えてきている。 また、折からの渡辺正・東京大学生産技術研究所教授と林俊郎・目白大学人間社会学部教授の共著「ダイオキシン 神話の終焉」の発刊もあずかって、“塩ビ=焼却時のダイオキシン発生の元凶”といった誤った観念は世の中から急速に払拭されはじめてもいる。 高炉原料化やガス化溶融などによる塩ビ廃棄物のFRが、広く一般社会に認められ受け入れられる環境条件は着実に整いつつあると言ってよい。エネルギー還元と化学原料化という二つの強みを併せ持つ点がもっと広く世間に知られていけば塩ビのFRは確実に多くの支持を得ることができよう。 リサイクル問題の権威としても知られる安井至・国連大学副学長は、塩ビのFRの持つ意味について「年間50万トンものEDCを輸入しているわが国の塩素の需給バランスから考えても、収集した塩ビ廃棄物から塩化水素を回収するのは望ましい営み」と述べる。 また、「塩ビ製品は他のプラスチック製品以上に耐久力があって寿命が長いので、廃棄物となって出てきたときは建築廃材や農業資材のように汚れがひどいものが多い。これらはマテリアル・リサイクルが容易でないので、エネルギー還元なり化学原料の回収なりでその多くを有効利用していくのがベターではないか」とも付け加える。 山本良一・東京大学国際・産学共同研究センター教授も、「塩ビの場合も他の製品と同様にリサイクルがきちんとできるかどうかで将来が決まる」と前置きして、「現在の塩ビ業界のマテリアル・リサイクル活動は十分評価されるが、これからは複合製品や汚れの付着のひどいものが相当排出してくるのでガス化による有効利用にも力を入れていくことが大切」と提言する。 ともあれ、“リサイクル活動の拡大は塩ビ業界にとっても持続的発展の不可欠の条件”というのがお二人に共通した指摘といえる。塩ビに対するアゲインストの風が弱まってきたといえるいま、塩ビ業界がリサイクル活動の拡大によって真の再生をどう実現していくかが注目される。 ![]() |