2003年03月19日
九大と大日本インキ化学が包括的連携研究契約を締結
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:大日本インキ化学工業、経済産業省、文部科学省

 九州大学と大日本インキ化学工業(DIC)は19日、両者がこのほど包括的連携研究契約を締結したと発表した。
 
 この契約は、DICの様々な研究開発ニーズに対して、九大の工学研究院、総合理工学研究院、農学研究院、機能物質科学研究院の教官や産総研九州センターの併任教官などが参画して独創的なコンセプトを創出し、国際競争力に優れた最先端の実用化技術を共同で開発することを目的としたもの。
 
 DICが大学との間で包括的な連携研究契約を結ぶのはこれが初めて。また、九大が民間企業と包括連携研究契約を締結するのも今回が最初。産学協同研究の新しい試みとして今後の活動の成果が注目される。
 
 実際の連携研究活動は、九大の総長特別補佐とDICの研究開発担当役員、さらには双方の研究代表者や産学連携担当者などで構成される「連携協議会」が指揮を取って推進していく。具体的な研究計画案は両者の研究担当者が共同で策定、連携協議会がその内容を検討して新たなコンセプトを挿入するなど必要な修正を加えて最終決定する方法を取ることにしている。
 
 研究の進捗状況は定例的に連携協議会に報告され、必要に応じて軌道修正やプロジェクトの差し替えも実施される。
 必要な資金は、DICの提供資金に加えて文部科学省や経済産業省の新技術開発費補助金制度も活用して確保していく考え。
 
 両者は、「光機能性有機材料の開発」を最初の研究テーマに取り上げていくことを決めている。この狙いを実現するため(1)安価で省エネ型の新規表示デバイスの開発(2)ナノ微粒子有機材料の製造技術の開発(3)新規光機能性材料の利用研究(4)バイオプロセスによる機能性高分子材料の開発(5)機能性ポリマーの重合用触媒の開発--の5つのプロジェクトをスタートさせることにしている。
 
 [梶山千里・九大総長の談話]
 大学と企業とでは研究開発の目的や手法がかなり異なる。企業は問題解決を主目的としがちであり、したがって単発・短期型の応用研究開発が多くなる。一方の大学は、あまり制約されないかたちで新規のテーマに取り組んでいきたいと考え、このためどうしても基礎研究に重点を置くことになる。しかし、基礎研究が社会に役立つには応用研究が不可欠であり、そういう点からも今回のDICとの包括的な共同研究が持つ意味は大きいといえる。産学協同のモデルを作りたい。

 [奥村晃三・DIC社長の談話]
 DICはファインケミカル事業をグローバルに展開しており、したがってたゆまぬ新技術開発が最重要課題といえる。ポイントはその新技術開発をいかに効率よくスピーディに実現していくかであり、ついては有力な大学と連携していくのがベターと判断して九大の意向をうかがったところ、協力していけばお互いに大きなプラス効果が得られるとの点で意見が一致したため契約を結ぶことができた。これによって、当社のコア事業である印刷材料、電子材料、工業材料の各分野の技術力が大きく向上していくと期待している。