2003年04月14日
パイオニア、有機ELで高機能、高性能を達成
イリジウム錯体でプラスチックディスプレイも
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:パイオニア

 パイオニアは低分子系有機EL(エレクトロルミネッセンス)のディスプレイ製品化で携帯電話用を実現するなど先端を走っているが、発光素子にりん光を利用した高効率発光材料の実現、単純マトリックス駆動からアクティブマトリックス駆動方式への移行、曲面表示やフレキシブルディスプレイを目指した基板のプラスチック化の研究などによって、次世代に向けた高性能、高機能有機EL素子への移行が進んでいることを明らかにした。
 
 とくにりん光材料を用いた有機EL素子については、Ir(PPY)3イリジウム錯体濃度の最適化、ホール注入層(HIL)の導入、ホールブロッキング層(HBL)材料の検討、光学膜厚化の最適化を行うことで、9.1%という高い外部量子効率を維持しながら、寿命は2.5mA/c〓時、初期輝度818cd/〓で3,300時間、初期輝度100cd/〓換算で2万時間を超えるという効率と寿命の双方にすぐれた性能を示す素子がえられたとしている。
 
 りん光材料を用いた有機EL素子の高効率化と長寿命化については、1990年、九州大学で4フェニルベンゾフェノンの三重項励起子からの発光が報告され、さらに米プリンストン大学から1999年にインジウム錯体を発光材料に使うことで、けい光材料の3倍の高い発光効率がえられたと発表された。これに新しい研究が加えられEL素子の高効率化と長寿命化が着々と進められているわけである。
 
 また、プラスチック基板上に有機ELディスプレイを作製することについては、防湿目的では基板上のバリア膜に窒化酸化シリコン(SiNxOg)膜を使うのが有効で、さらに素子の保護膜にはプラズマCDVによる窒化シリコン(SiNx)膜が有効との研究結果がえられたとしている。これに平滑化層を導入することによってダークスポットの低減が可能となって薄さ、軽さ、フレキシビリティの高いディスプレが試作できたとしている。