2003年05月16日
【解説】中国のアンチダンピング仮決定と、わが国塩ビ業界の今後
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:旭硝子、ヴイテック、新第一塩ビ、大洋塩ビ

 中国商務省は12日、日本、韓国、米国、ロシア、台湾の計5カ国・地域から輸入している塩ビ樹脂について、ダンビング(不当廉売)の仮決定を下した。昨年3月29日の公告以来、国内の「アンチダンピング条例」に基づき、ダンピングの状況や、国内産業への影響について調査してきた。その結果、中国内のメーカーに損害を与えていると認定した。最終決定で結論が変わる可能性もあるが、中国の輸入業者は12日以降、これらの地域から塩ビを輸入する際は、ダンピング率に応じた保証金を支払わなければならないことになる。

 日本企業のダンピング率は、信越化学54%、大洋塩ビ32%、鐘淵化学62%、ヴイテック50%、新第一塩ビ70%となっており、最終的にダンピングと認定された場合には関税に上乗せられる。その場合、仮決定の期間の保証金も没収されることとなるため、実際にはこれを支払ってまで輸入する業者はいないと見ていい。

 2002年の中国の塩ビ樹脂の輸入量は170万トン。うち日本から50万トン、台湾から40万トンなど、対象5カ国・地域からの輸入合計は139万トンと81%に及ぶ。一時的には急に供給不足となり、中国の国内市場が混乱するのではないかとの見方も出ている。

 今回の決定で問題なのは、国によってダンピング率が大きく異なる点である。上記の通り日本メーカーが32%〜70%なのに対し、台湾のFPCや韓国のLGは10%と非常に低い。計算方法は不明だが、台湾や韓国の場合は国内価格が海外市況にスライドするため、輸出価格との差が少ないのではないかと推測されている。今後中国内の需要が伸び、供給不足で国内価格が大幅にアップした場合、FPCやLGは輸出が可能になるとの見方もできるわけだ。

 今回の仮決定について、日本の塩ビ各社は表面的には「短期的な影響は軽微」として冷静を保っている。主要販売先の多くが塩ビ樹脂を輸入して玩具などに加工して再輸出する企業であり、保税輸入の場合には保証金支払いの対象外になるためである。またパイプ、窓枠など内需用途の場合でもコンパウンドの形で輸入されるものは対象外となる。(コンパウンドでの輸入は全体で50万トン、うち日本からの輸入は10万トン強)

 だが、中長期的に見れば、やはり影響は大きいに違いない。中国の塩ビ需要の中で現在大きく伸びているのはパイプや窓枠・ドア材など内需用途である。この分野から締め出された各国のメーカーは、保税輸入分野に殺到するため、需要の伸びが大きくないこれら分野での競争が激化することになる。コンパウンド形態での輸出も、量が増えて中国メーカーが問題にすればアンチダンピングの調査対象とされる可能性がある。
 
 大洋塩ビや旭硝子などは、インドネシアなど海外拠点からの輸出は可能だが、これも同様に量が増えると調査対象とされる可能性がある。現実にアクリル酸の場合は日本、米国、ドイツからの輸出がダンピングと認定された後、インドネシア、シンガポールなどからの輸出がダンピング認定を受け、日本企業の子会社の輸出が対象となった。

 中国の法律では、この扱いの期間は5年以内だが、延長も可能となっている。日本のメーカーはこれまで国内需要の低迷を中国向け輸出でカバーし、救われてきたが、最終的にダンピングと認定された場合は、大量の輸出は期待できない。これを機に、業界再編の最後の取りまとめを行うとともに、設備の大幅処理を行う必要があろう。

 韓国のLGは、現地合弁会社の天津LG大沽化工の能力を増強するとともに新立地での生産を計画しており、中国での生産を2005年に57万トン、2010年には110万トンとする計画である。また台湾のFPCも中国での塩ビ生産について台湾政府の認可を得ている。今後中国の需要に対応するには、現地生産を考えるしかないという声も業界から出てきそうだ。