| 2003年10月10日 |
| 科学技術未来戦略でフォーラムがパネルディスカッション、JST発足記念 |
| 「文、理の交流を」、「研究領域のカベをなくせ」など |
| 【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:なし |
科学技術振興機構(JST)は10月から独立行政法人としてスタートをしたのを機会に9日、千代田区の東京国際フォーラムで「科学技術未来戦略フォーラム」パネルディスカッションを行った。 同フォーラムでは阿部博之・総合科学技術会議議員、椎名武雄・日本IBM最高顧問、野依良治・理化学研究所理事長ら8氏がパネラーとなり、北沢宏一・JST理事がコーディネーターを務めた。 JSTは日本科学技術情報センター、新技術事業団、科学技術振興事業団が統合、わが国の科学技術基本計画の中核的実施機関としてスタートした。パネルディスカッションでは同戦略の目標、あり方、研究体制などが討議された。各パネラーの発言要旨は以下の通り。 ◇沖村憲樹・JST理事長のあいさつ 日本の大学の研究レベルは主要49カ国中最低であるとの評価があって、これでは科学技術創造立国なりたたないとの考えから91年に科学技術基本法ができ、24兆円が予算に組み込まれた。とくに基礎研究を建て直そうというわけだが、世界の研究の4分の3件が米国、しかも50%が米国から引き出されているのが現状。大学特許は米国がわが国の14倍、全体の70%を占めている。日本はトップの水準を保つ必要があり、最適社会をデザインして戦略的に研究を行うべきである。野依氏をトップに研究開発戦略センター(40人)をスタートさせた。 ◇北沢宏一・JST理事がコーディネーター 本日の8人のパネラーは未来戦略に「一言」もっていると思うので個人の立場からご発言を願いたい。 ◇椎名武雄・日本IBM最高顧問 米国はワン(ONE)強になった。今、日本の研究には自由度がないといわれるが、自分でカベをつくり外に出ようとしないのではないか。米、インド、韓国では研究者それぞれが、何かをキャッチアップしようとしている。学際、業際、国際のカベを破って行くべきであろう。国際的に貢献できる日本人の分野があると思う。地球環境、エネルギー、燃料電池などだ。リソース(資金)については頭脳を使えばよい。 ◇黒田玲子・総合科学技術会議議員 戦略の目標はいろいろあるが、10年先、20年先を考えて、波及効果のあるテーマをバランスよくやる必要がある。現在、毎年5,000億円もある研究費(高齢化対策、医療費など)の60%もが海外に流出しているのは問題。生活を楽にするだけ、経済をよくするだけという研究では困る。また、原子力(核融合)の研究については、巨額の研究費がかかることをふまえて、十分検討すべきである。 ◇阿部博之・総合科学技術会議議員 21世紀は現存するもののなかではインパクトのあるものがでない。生物系、非生物系の両方の教育を行うことが望ましい。日本の研究はタコつぼ型(政府はささら)といわれる。文、理を分けていていいのか。いっしょになって知恵をだすべきだろう。 ◇野依良治・理化学研究所理事長、JST研究開発戦略センター主席フェロー 戦略センターは科学や産業のしもべではない。科学技術の知識をつくり、活用するといった面で、独創的、先端性を生かしていく、大事なのは啓蒙することである。歴史をふまえ、20年から30年先を考える必要がある。化学の可能性は無限だが、国益を考えなければ、他の国を利するだけになる。産業技術は事業性をもたなければならない。しかし、20年から30年先の文明をつくるためには営利性だけでは大きな部分が欠落しよう。21世紀は人間性の回帰のときである。 ◇毛利衛・日本科学未来館館長 来週、宇宙を飛んだ世界の7人が、全国11ヵ所で経験を語り、意見を交換する。生命維持カプセルで先端の科学技術を体験したわけだが、何のためにシャトルの中で生きたのか。人間が生きのびるため、延命のためである。ただ、今後、大型プロジェクトでどこまでやるかという課題はある。 ◇生駒俊明・JST研究開発戦略センター上席フェロー 米国は80年まで科学技術至上主義だった。日本は80年代、研究戦略がなくてもいいものなら売れるということで経営戦略からはずされてきた。21世紀は何のために何をやるかの戦略が求められている。戦略とはMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)であり、科学技術が経営に取り組まれるようになった。ITがその例であろう。ただ、戦略の目標は別個につくられる。何のためかは社会ニーズによってきまる。目標を誰がきめるか。社会からどのような形ででてくるか。限られた人員、予算も問題。(1)研究の進歩から(2)小さいものから(3)複数、仕組みからといった三つの選択があると思う。 ◇立花隆・評論家、ジャーナリスト 宇宙開発には毎年2,000億円もの巨額な資金が投入されている。国の資金をどこにふりむけるかは戦略だが、下からの意見が大切である。核融合にしても、1兆3,000億円の資金が議論のマトになっている。肝心の点(技術評価)の議論がないまま、資金をどうあつめるかといったことが進んでいる。一般的には1億円の資金があれば、相当の技術開発が進むといわれている。ビッグプロジェクト再考のときだ。不良債権が発生しているのではないか。 ◇鳥井弘之・東京大学教授 科学技術でどのような文明をつくるのか。社会の価値観と科学技術の関係についてのコンセンサスが必要である。インターネットやパソコンを扱う者が、同意できるかどうか。科学技術者だけの戦略では反対者もでよう。システムに関する技術者の参加が求められる。予算を改善するのではなく、まず研究はどうあるべきかの議論が必要である。 ●参考 http://www.chem-t.com/fax/images/031010yg.jpg ●写真 http://www.chem-t.com/fax/images/031010yg2.jpg |