2004年02月16日
「ダイオキシン討論会」、意識のずれは埋まらず
市民からは、“危険論”による被害を指摘する声も
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:なし

 「止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク(ダイオキシン関西ネット)」主催のダイオキシン討論会「ダイオキシンは安全か」が14日午後1時30分から5時30分すぎまで大阪工業大学の創立60周年記念館で開催され、渡辺正・東京大学教授や宮田秀明・摂南大学教授ら4人の講師の講演を中心に活発な討論が行われた。しかし、「ダイオキシン 神話の終焉」を著した渡辺正教授と林俊郎・目白大学教授が「ほとんど問題のないレベルをもっとゼロに近づけようという営みは資源の壮大な浪費」と指摘したのに対して、宮田教授や藤原寿和・止めよう!ダイオキシン汚染・関東ネットワーク事務局長らは、「生態影響のプライオリティーが最も高いのがダイオキシン」「日本の規制・基準は海外に比べて甘い」「主犯は農薬でなく焼却炉からの排ガス」などと従来からの主張を繰り返すのみで新たな反論データを示すことなく終わったため議論がほとんど噛み合わず、基本的な意識の大きなずれを抱えたままでの閉幕となった。
 
 今回の討論会は、「ダイオキシン関西ネット」が、“「ダイオキシン 神話の終焉」を巡って徹底討論します。この機会に徹底批判しようではありませんか”と会員等に参加を呼びかけて開催したもの。会場には定員の180人を大きく上回る人が集まり、急遽用意された多数の椅子席もたちまち満席となる盛況ぶりであった。
 しかし、肝心の討論の中身は必ずしも熱のこもったものとならなかったといえる。例えば、渡辺、林の両教授による「ダイオキシンは本当に命と健康を脅かしていると言えるのか」との問いかけや「1970年から97年までの間はごみの焼却量が大幅に増えていたがダイオキシンの摂取量も体内量も逆に減っている。それにもかかわらずごみ焼却炉対策に巨額の資金を投入してきた点は大いに疑問」「ほとんど安全なものをもっと安全なものにするするために多くのコストと労力をかけるのはおかしい」といった主張に対して具体的なデータを用いての回答や反論がなく、「日本政府のTDIは4pgだが、他の国の多くの基準値は2pgと低い」(宮田教授)、「ダイオキシン類のうち問題とすべきは慢性毒性のなかでも発がん性や催奇形性、さらには低濃度でも影響が生じる可能性がある生殖毒性、免疫毒性、胎児毒性、脳神経障害などであることは世界的な常識」(藤原事務局長)などと“肩透かし”的ともいえる見解の披露があるだけで、真っ向から切り結ぶかたちの討論にはならないまま終わった。
 それどころか、閉会ちかくになってからは「ダイオキシンに発がん性がないと世界で言われていることは承知している」(宮田教授)といった発言や「焼却炉に数十億円を投入する必要はなかった。空気と温度調整だけで解決できた」(同)との見解の表明もあり、すかさず渡辺教授が「宮田先生とやっとメンタリティーがあった」と発言して会場がドッと沸くシーンさえあった。
 一方、一般市民の発言は文字通り多彩であった。「所沢市民の多くがダイオキシンで死亡すると言われてきたが何も起こっていない。多額の血税が使われ、その結果焚き火ができなくなっただけ」といった発言や、「私は長年産婦人科医を続けているが、アトピー性皮膚炎の新生児は見たことがないし周囲でも聞いたことがない。新生児がダイオキシンの影響でアトピー性皮膚炎にかかるといわれて多くの母親が母乳をミルクに切り替えたのは誤りであった」など、“ダイオキシン危険論”がもたらしたマイナス面を厳しく指摘する向きがあった反面、「いまも体調が悪いのはダイオキシンのせいと思う。近くには指が異常な生き物も見られる」とか、「近所の環境濃度が高いのは明らかにダイオキシンのせいと考える。もっと厳しく規制すべき」と強い不安と不満を口にする夫人も幾人か見られた。