2004年05月17日
中原・トクヤマ社長が会見、今期の増益に自信示す
特殊化学品部門を中心に得意の製品を相次ぎ拡充
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:旭化成、旭化成ケミカルズ、シャノン、新第一塩ビ、トクヤマ

 トクヤマの中原茂明社長は14日夕に都内で定例記者会見を開き、03年度の決算と04年度の業績予想ならびに3ヵ年計画の進捗状況等の概要を説明した。
 
 この中で同社長は、04年度の業績について「営業利益、経常利益、当期利益の全てが過去10年で最高の規模になる見込み」と増益確保に対する強い自信のほどを示すとともに、「イオン交換膜の旭化成ケミカルズとの統合、現像液設備の増強、湿式シリカのオリエンタルシリカ社との事業提携、乾式シリカ設備の増強、超大型単結晶の開発の成功--等々によって念願の事業構造の改革も着実に実現できる見通しがついてきた」とも述べ、企業体質の強化が順調に進んでいる点を強調した。
 
 中原社長の発言内容の概要はつぎの通り。
 
 ○03年度の連結業績を一口で紹介すると、売上げは減少、営業利益はおおむね横ばい、経常利益と当期利益はともに大幅増、ということになる。化学品部門は減収・減益となったが、特殊品部門とセメント・建材その他の部門が増収・増益となり化学品の落ち込みをカバーした。もっとも、化学品部門の減収はPP事業の出光石化への譲渡によるところが大きく、実質は前年並みであったと言える。特殊品部門の業績のアップはポリシリコンの成長に負うところが大きい。
 ○こうした中での最大の収穫は、有利子負債を267億円減らして1,046億円まで圧縮できたことにある。有利子負債の売上高比率は47.7%となり、目標の50%を割り込んだ。この結果、総資産は79億円減って3,088億円となった。
 ○一方、04年度の業績については、IT関連産業の好調が当社にとってもプラスに作用して増収・増益になると予想している。売上げは86億円、営業利益は29億円の増加を見込んでいる。問題は、石炭、石油、ナフサの価格がかつて予想していた以上の幅でなお上昇する気配が濃厚な点だ。当然のことながらその場合は、すかさず製品価格に転嫁していかざるを得ない。
○化学品部門は、売上げが3億円の減少となるものの営業利益は12億円増える見通しにある。減収を予想しているのは、ラップフィルム事業の撤退とIPA設備の定修による売上げ減が避けられないため。増益を見込んでいるのは、新第一塩ビが黒字転換できる見通しにあるほか、PPフィルムの価格改善が進んでいること、さらには赤字のホームプロダクツ事業をオカモトに譲渡したこと--等による。
 特殊品部門は、売上げが81億円、営業利益が21億円それぞれ増える見込みだ。ポリシリコンの販売数量の増加と価格の改善、台湾やシンガポールにおける液晶関連製品の販売増、さらにはイオン交換膜事業の旭化成ケミカルズとの統合効果の拡大--などを期待している。
 セメント・建材その他は8億円の増収を予定している。ただし営業利益は前年並みにとどまりそうだ。石炭の高騰分をきちんと製品価格に転嫁することと生コン部門の合理化を徹底することで何とか収益を確保していきたい。
 ○ねらい通りいくと、連結の営業利益と経常利益と当期利益のすべてが過去10年で最高の規模となる。単体でも経常利益は史上最高となろう。
 ○3ヵ年計画は、事業構造の改革、徳山製造所の競争力の強化、財務体質の強化、研究開発の効率的展開--など当初掲げた課題をほぼ順調にクリアできつつある。
 事業構造の改革については、生活用品事業のオカモトへの譲渡、クロルアルカリ事業のビジネスモデルの構築のスタート、イオン交換膜事業のアストムへの統合、現像液の設備増強、湿式シリカでの台湾・オリエンタルシリカとの事業提携、クロルスルホン酸分野からの撤退、乾式シリカ設備の増強、アジア地区への輸出シフトによるセメントの生産500万t体制の確保、佐賀県相知工場の竣工によるシャノンの製造・販売体制の拡充--など様々な手を打ってきた。これらは着実に成果を上げていくことになる見通しだ。
 ○研究開発の効率的展開では、チョクラスキー法によるフッ化カルシウム(CaF2)超大口径単結晶(300mm直径)の育成に世界で初めて成功したことが大きな成果と言える。サンプルワークを開始したところだが、ArF(フッ化アルゴン)液侵ステッパー分野の注目を集めており、05年には上市できると考えている。07年には年50億円の売上げを実現できると予想している。
○ROAは当初の計画通りに推移しており、04年度の目標の2.5%はきちんとクリアできると判断している。