2001年10月24日
BASF首脳が会見「日本の石化業界再編は必至」
「世界不況長期化の中でも利益は確保」
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:BASF、住友化学、武田薬品工業、日本油脂

 ドイツBASFのヘルムート・ベックス取締役、BASF東アジア地域本部ディートマー・ニッセン社長、BASFジャパン成尾友良社長の3氏は24日、そろって記者会見し、経営の現状や課題など当面している問題について語った。
 
 この中で3氏は、世界経済はなお厳しい冷え込みが続くが、BASFのアジア地域での投資計画に変更はないこと、日本に対しては高機能製品を中心に、新たなビジネスチャンスを求めていること、さらに、日本の石化業界は国際的な観点から見て大きな再編が必要になると思う、などと語った。
 主な発言内容は次の通り。
 
(1)中国では南京にフェアブント拠点の中核として大型石化工場を着工したが、投資の重点は中国にだけ置いているわけではない。インドではBASFスタイレニックス社を通じて年産6万トンのPS工場を買収した。韓国でも麗川にTDI14万トン工場を建設中のほか既存のMDI10万トンを16万トンへ拡張する計画を進めている。また6月にはSKエバーテック社からSM年産32万トン工場を買収した。

(2)日本では武田薬品工業のバルク・ビタミン事業を買収し、今年1月に武田ビタミンが誕生した。米国サイアナミッド社の農薬事業を買収したことで日本にもBASFアグロ社を設立した。日本油脂とは塗料会社、日本油脂BASFコーティング社を設立した。これらの事業はいずれも順調に業績を伸ばしており、満足できる成果をあげている。

(3)日本では今後とも当社がニュービジネスと位置づけている農薬、健康、染・顔料など高付加価値分野でパートナーシップを組み展開していくことを考えたい。エチレンや汎用樹脂には興味はない。日本の化学業界は不況が長引き、リストラや再編の動きが高まっているが、そうした中からBASFとフィットするものがればビジネスチャンスとしてとらえていくことになると思う。

(4)世界経済の冷え込みは厳しい。テロ事件後さらに状況は悪化している。今年GDPが前年比プラスになる国は1つもないだろう。シンガポール政府はマイナス成長を発表したし、中国は当初の成長率7%から今では5%強、インドも当初の6%から5.7%へと下方修正している。
 こうした中、当社の業績も1Qまでは好調だったが2Q以降厳しい状況が続いている。しかし売り上げが落ちても利益は確保できる見通しだ。アジア各地で進めている投資計画にも変更はない。
 
(5)日本の石化業界の首脳とはよく会っているが、日本は過剰設備、過剰人員をかかえまだ多くの宿題が残っているという印象だ。
 恐らく多くの経営者は再編が必要と認識しているだろう。三井住友化学のような動きはこれからも出てくると思う。少なくとも今後5年以内には業界の形は相当変ったものになっているのではないか。とは言え、日本の力を過少評価しているわけではない。日本は世界第2位の生産国だ。将来は再編が進んでより強くなっているに違いない。