2005年08月04日
米倉・住化社長「サウジ・ラービグの競争力に強い自信」
「中東原油を確保、わが国エネルギー政策にも貢献」
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:住友化学
米倉住友化学社長

 サウジ・アラムコと共同で「ラービグ計画」を推進するため合弁契約に調印して帰国した、住友化学の米倉弘昌社長は4日、記者団と懇談し同プロジェクトの概要を説明した。この中でとくに現地の安価なエタンを原料とするため、ナフサ・ベースの石油化学事業に対してコスト競争力に優れていること、日本の全消費量の約10%に相当する日量40万バレルの原油と年間120万トンのエタンの供給を受ける権利が確保できることにより、わが国のエネルギー資源確保に貢献できることなどの点を強調した。
 
 同計画は、原油処理能力日産40万バレルの既存トッパー設備を中心に、石油化学コンビナートを建設するもので、エチレン年産130万トンのクラッカーとプロピレン同90万トンのFCC装置をはじめ、EPPE25万トン、LLDPE35万トン、HDPE30万トン、EG60万トン、PP70万トン、PO20万トンなど、石油精製と石油化学を統合した世界最大級のコンプレックス建設を目指している。
 
 米倉社長は、建設コストが当初予定した総額43億ドルから、85億ドル(新規計画のユーティリティ設備への投資額10億ドルを含む)に膨張したことについて「この1年で世界経済は様変わりし、今やコントラクターが不足する時代だ。このためエンジニアリング・フィーや建設資材などが高騰したが、やむをえない」としたあと、「資金は両親会社で折半するが、自己資金で35〜40%を調達する。当社の負担は1500億円程度と想定している。当社は現在1500億円近いキャッシュフローをもっているので、不安はまったくない。借入れについても、政府系金融機関や銀行筋は、プロジェクトの経済性、信頼性を高く評価してくれている。リスクという点でみれば、保険でもカバーできている」と語った。
 
 プロジェクトの優位性については、原料コストの違いを第一にあげ「中東のエタン価格は百万BTU当たり0.75〜1.5ドル。トンに換算して37〜74ドルだが、ナフサの470ドルに比べれば、6分の1から10分の1という安さだ。原油やナフサ価格は常に変動すがエタン価格は安定している。原油価格が上がればそれだけ有利になる」と自信を見せた。
 
 また「住友化学の石油化学部門は日本、シンガポール、アメリカの各生産拠点とサウジが相互に補完しあい最適生産体制を構築することによって飛躍的に強まるだろう。当社が今後さらにグローバル展開していく上で、ラービグを大きな足がかりにしていきたい」と語った。