2006年02月01日
競争政策研究会「企業結合審査にみる改革と課題」まとむ
公取委の「輸入圧力審査」を“批判”
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:経済産業省、公正取引委員会

 公正取引委員会の「企業結合審査」に対しては、産業界からも透明化や迅速化などを求める声があがっているが、経産省はこのほど、経済産業政策局長の私的研究会・競争政策研究会(座長:鶴田俊正専修大学名誉教授)がまとめたレポート「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」を公表した。
 
 この中で、最近の公取委の審査事例について「ガイドラインの改訂、公表事例の充実、審査期間の短縮などが見られ、企業結合審査の改革は進みつつある」と評価、また審査に当たってはシェアや競争者の数以外の要素を評価する傾向も見られ「結合後のシェアが高い案件であっても認められた事例も増えている」などと報告した。
 
 一方、課題として(1)輸入圧力など国際的な競争可能性の有無に関する判断基準の明確化(2)セーフハーバーの範囲の更なる拡大・明確化(3)問題解消措置の選択肢の明確化の3点をあげた。「国際競争が激化し日本市場の競争状態を大きく左右する現状に即した審査」を実現する上で不可欠と指摘した。
 
 このうち「輸入圧力の認定」をめぐる問題では
(1)東海カーボン・三菱化学によるカーボンブラック事業の統合(05年1月)
(2)PSジャパン・大日本インキ化学によるポリスチレン事業の統合(05年4月)
の例をあげ「輸入圧力なし」「日本への輸出増加の蓋然性が低い」などと判断した点について、同レポートは「企業にとっては構造上の問題であり、景気や需給要因を勘案することには疑問がある」と以下の通り“批判”した。 

 アジア地域における需給逼迫状態が当面継続するとの判断をもとに、輸入圧力・輸入増加の蓋然性がないとされたため、M&Aを断念する案件が相次いだが、本来構造的な判断をなすべき企業結合審査において需給要因を勘案することには疑問がある。例えば、輸入圧力の評価に当たっては景気循環的な需給要因は考慮しないなどの判断基準を明確にすべきである。