2007年01月05日
「環境・安全、社会的使命果たす」日本化学工業協会会長 冨澤龍一
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:なし
冨澤日本化学工業協会会長

 平成19年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 昨年の世界経済は、グローバリゼーションを背景に、米国経済やBRICs諸国などの急成長が牽引して緩やかに上昇を続け、また世界的需要拡大もあり、原油など国際商品相場が上昇した年でありました。

 わが国経済も、2002年2月に始まった景気拡大局面が昨年11月に「いざなぎ景気」を超え、戦後最長を記録しましたが、今回の経済成長は、輸出の増加と企業の設備投資に大きく依存する一方で、個人消費への波及は進んでいないとも言われ、「実感なき拡大」の声も多く聞かれました。

 また、今年は、世銀、OECDなど国際機関や内外の民間経済機関は、揃って世界経済の減速を見込んでいます。また、世界各地での政治情勢の動静が経済に与える影響にも懸念が若干残り、わが国にあっては、金利や円為替レートなど金融情勢の変化にも留意が必要です。

 しかしながら、「経済成長なくして日本の未来なし」を基本方針とする政府の諸施策に呼応し、また進行するグローバリゼーションの利点を十分に活用することにより、化学業界にとって、未来に向けて明るい展望を開く一年となることを期待しています。

 昨年の化学産業は、原料価格の大幅高騰の影響を受けながらも、生産、出荷ともほぼ前年と同水準で推移しました。今年は、世界経済の減速、中国など新興工業国の設備拡大など、内外の需給情勢は厳しくなると予想されていますが、国内経済は徐々に改善が進んでおり、昨年並みの活動を維持するだけでなく、緩やかに拡大することを期待するものであります。

 化学業界の使命は、言うまでもなく、酸アルカリなどの基礎資材から医薬品、農薬、化粧品など最終製品に至るまで、社会が必要とする機能性材料を提供することにありますが、世界の持続可能な発展のために、生産・流通・消費のすべての過程を通じて、人々や社会に対する安全と地球規模での環境保全の責任を全うしなければなりません。

 化学品の安全性に関しては、国際的・国内的に法整備が進められており、わが国でもGHSに関する国連勧告に基づき、昨年12月、改正労働安全衛生法施行令等が施行され、化学製品のラベル表示変更および貼付、MSDSの変更などが義務付けられました。今後、化学業界は本改正の円滑な運用フォローに最大限の努力をもって取り組んでまいります。

 また、欧州では、独自の新しい化学品規制「REACH」が成立し、本年6月に施行されます。この規制は、日欧間の化学品貿易や欧州域内での日系化学企業の活動に大きな影響を与えるため、日化協では日本と欧州に「日化協REACH対応協議会」を設立し、日本政府との密接な連携のもとに、実効性のある制度とするため欧州議会関係者などに問題点を提起して交渉・調整を行ってまいりました。来るべき施行に向けて、ガイドラインの適正化や運用の明確化など、引き続き動向を注視し、最大限の対応準備を進めてまいります。

 環境保全問題で直面している課題である地球温暖化対策では、化学業界はいち速く自主行動計画を策定し、推進してまいりました。その結果、既に2010年のエネルギー原単位削減目標を達成し、温暖化ガスの削減にも成果を上げておりますが、今後とも、同計画の着実な推進を図るとともに、技術革新を通じた更なる省エネルギーなど、地球環境問題の本質的な解決に取り組んでまいります。特に、海外での事業展開に際しては、これまで化学産業で培われてきました省エネルギー技術、環境保全技術の移転を促進するとともに、途上国におけるCO2排出抑制対策にも貢献してまいります。

 わが国が国際社会で存立していくためには、「科学技術立国」の礎を確立しなければなりません。科学技術を支える創造性豊かな理工系人材の育成のため、化学業界では、毎年産学協同で「夏休み子ども化学実験ショー」や「国際化学オリンピック」の代表選考を兼ねました「全国高校化学グランプリ」などを開催しています。
 
 その国際化学オリンピックは、2010年に日本で開催されることになり、昨年12月に、産官学の協力の下、野依良治先生を委員長とする「化学オリンピック日本委員会」が設置されました。このような活動を通じて、次世代を担う青少年の育成をはじめとして、社会や一般市民の化学に対する興味や理解が一層進むよう努めてまいります。

 わが国業界が持つ多くの課題を解決するには、各企業がそれぞれの特色を生かして事業基盤を強化し、グローバリゼーションを乗り切る競争力をもたなければなりません。また、このことが社会や国民の期待・要望に応える道であると考えています。

 最後になりますが、この一年が化学業界および関係者の皆様にとって、実り多き年となることを祈念しております。

平成19年元旦