2007年03月12日
返還10周年の香港の発展と取り組み
「中国本土と連携して発展 海・空運のハブ」に
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

 香港が中国に返還されて10年。ジェトロ、日本香港協会、香港貿易発展局は先に共同で、これを記念する「返還10周年記念特別セミナー」を東京・赤坂の国際交流基金国際会議場で開いた。

 関志雄・野村資本市場研究所シニアフェローが「中国本土と連携して発展する香港」、董建成・OOIL(Orient Overseas International Limited)会長兼CEOが「海運・空運ハブとして大きく飛躍する香港—その優位性の源泉を探る」のテーマで講演した。

 香港貿易発展局(1966年に設立された準政府機関)によると、日本の自動車産業ビック3の中国華南地域進出を皮切りに広東省・香港への投資が急増し、自動車ばかりでなく環境などの知識・技術集約型の産業が発展、06年1−3四半期に実質GDP成長率が6.8%増を記録したとしている。

 また、06年には航空貨物取扱量が世界第1位、海上貨物取扱量が世界第2位となり、中国企業による香港株式市場への上場増大、香港渡航者の増加など回帰現象もみられるようになった。来訪者は99年の1,000万人から昨年は2,280万人(うち中国人60%)に増えた。経済の4本柱は観光、貿易物流、金融、専門および生産者向けサービス。

 今後の10年間には(1)華人ネットワークのセンター機能 (2)大中華圏・東南アジア市場へのゲートウエイ (3)卓越したサービス&サポート基地としてのマーケット・プレイス香港の位置が高まる見通しである。とくに中国のメガバンクの上場が進んでいる。

 主要経済指標をみると、03年から06年(06年は第1四半期)までに人口が6万8,000人から6万9,900人、GDPが1,582億ドルから1,887億ドル、一人当たりGDPが2万3,300ドルから2万7,000ドルに増え、失業率が7.9%から4.8%に下がった。

 UNCTADによれば05年に、香港はアジア第2位、世界第6位の海外直接投資(FDI)の投資先である。

<関氏の講演要旨>
 トウ小平主席の「1国2制度」が成功し、1998年から50年はかかるといわれた“中国の香港化”が早まっている。計画経済、国有企業の体制から資本主義経済に移行してきた。香港は中国本土と03年6月に経済貿易緊密化協定(CEPA)を結んだ。財貿易とサービス貿易の自由化がふくまれている。

 汎珠江と呼ばれる三角地帯は中国の3大経済圏(揚子江デルタ、環渤海湾)の中で人口が最大(4億5,200万人)で、成長も早い。土地の値上がりや労働力不足などで地域格差の拡大が問題視されているが、9(省)プラス2(香港、マカオ)といわれるこの地域は“交換地域”でもある。

 この9には、例えば低所得の貴州も含まれている。広東省は自動車などのハイテク製品にウエートを置き、海外にも進出する。自動車はすでに年62万台を生産、10年に160万台、20年に300万台を目指す。それぞれの省が得意な製品を作り、交換できるわけだ。

 広東省は外国製品の加工基地から海外での生産に移行する。このときベトナム、インドネシアなども対象地域となる。香港はハブ港としての重要性が高まる。米国のデトロイトは自動車生産の集約地だが、広東省は電子情報、家電、機械など9大産業を持っている。

 香港ドルと人民元の安定は貿易と投資に有利だが、数年以内の一本化は難しい。中長期的には可能だが、当面は着かず離れずというところだろう。人民元高により、香港の物価が大陸と比べ相対的に安くなり国際競争力が高まるという現象がおきる。

<董氏の講演要旨>
 今、中国が注目されているのは実質GDP成長率8.5%(過去10年)、貿易成長率18.5%(同)、外国直接投資額年600億ドル(05年)、外貨保有高1兆ドル(06年、世界第1位)といった成長性だろう。

 香港は中国のゲートウエイである。中国の3大経済圏の一つである広東省の珠江デルタに接している。同デルタは人口4,500万人(EUと同じ)、GDP総額2,250億ドル、成長率20%(80年以降、中国平均の約5倍)、中国輸出額の3分の1。

 広東省は人口9,100万人、GDP2,790ドル(05年、中国最大)で中国最大の消費市場。一人当たり可処分所得が2,000ドル(中国平均の約2倍)、自動車、製鉄、石油化学、造船など重工業の基盤を持つ。総輸出入価値の63%を外国投資企業が占める。

 香港は地理的優位性、ビジネスおよび運送・物流のインフラで「プラットホーム」。外資企業の中国参入拠点でもある。香港からアジアの主要市場まで4—5時間でアクセスできる。広東は高速道路、鉄道などのさらなる拡充が予定されている。税制も有利。

 輸送・物流面では、航空貨物の取扱量世界1の輸送ターミナル(1日9,300トン、05年成長率9.9%)、繁栄の国際空港(国内は150都市、5,400便)、充実した世界1の貨物コンテナ港などを持っている。