| 2007年08月01日 |
| 住友化学、CDT社の子会社化で高分子有機EL開発を加速 |
| 【カテゴリー】:経営(海外、新製品/新技術) 【関連企業・団体】:住友化学 |
住友化学は31日、高分子有機ELの開発ベンチャーである、ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー社(Cambridge Display Technology =CDT社)の買収を発表(既報)したが、住化の中江清彦常務執行役員は記者会見で「これで両社の技術一体化が加速される。シナジー効果は大きい」と、これまでの経緯や完全子会社化する意義などを語った。 住友化学は1989年に高分子有機ELの研究(PPV系)に着手、「暗室でもほのかに発光する」技術を発見して、90年2月に特許出願した。しかし、その10カ月前の89年4月にケンブリッジ大学が同じ技術内容の特許を出願していた。 CDT社は1992年、そのケンブリッジ大学で高分子有機ELの特許を取得した学者・研究者らが設立した研究開発ベンチャーだ。 住友化学はその後、CDT社と共同で材料の研究開発を行うことになり、02年にはCDT社に資本出資、05年にはCDT社と合弁の発光材料製造・販売会社「サメイション」を設立するなど密接な協力関係を築いてきた。 住化はその一方で、米・ダウ社からも有機EL事業を買収し、独自の研究開発体制を構築してきた。 今回、CDT社の買収に至ったきっかけは、一つには実用化に向けての両社の“視点”の違いにあったようだ。 「最初は小型のものでもいいから、早く商品化したいというCDT側と、できるだけ完成度を高めて大型製品でスタートしたいという住化側の希望」が合わず、協議しているうちに住化が全株式を買い取ることで一致したという。 CDTはもともと研究開発のための会社であり、長期の研究を続けるには資金力に限界があったようだ。 だが、CDTの持つ技術力はやはり相当のものという。特にデンドリマー材料、デバイスパイロット、生産ライン技術、インクジェット技術、駆動回路設計技術などは世界の最先端をいくもので、これが住化の蛍光材料、燐光材料などの発光材料技術と一体化すれば、高性能材料の開発は一段と進むと期待される。 CDTは従業員130人だが、うち100人が研究者。材料分野の研究者が40数人、デバイス関連が50数人という内訳だが「ノーベル賞候補クラスが何人もいる」といわれるほどにレベルは高い。 CDTは現在、米国ナスダック市場に上場しており、発行済株式数は21.6百万株、1株当たりの株価は6.15ドル。これを今回は1株12ドルと2倍にプレミアムを付けて買収する。 高分子有機ELで大型ディスプレイ、壁照明市場への進出を狙う住化は、2008年中には実用化、2010年には大型テレビをターゲットとするスケジュールを組んでいる。 高分子有機ELは、従来の液晶や低分子有機ELなどに比べて、製造方法が開放系(インクジェット)で、素子構造が単純、大面積のディスプレイに対応でき、低コスト、量産性に優れているなどの特徴をもっている。「今後はディスプレイメーカーとのアライアンスも視野に入れた展開になるだろう」(中江氏)というが、今回の買収で、本格事業化に向けた取組みがどのように進むか注目される。 |