2007年12月10日
中国が渤海湾中心の経済圏重視へ
天津を拠点に国際産業都市拡大めざす
【カテゴリー】:海外
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 広州の珠江デルタ、上海・江蘇の長江デルタの発展に次いで、中国政府の渤海湾を中心とする経済圏の重点的な開発が進んでいる。とくに天津市へのインフラ投資が目立つ。行政の北京、産業・貿易の天津の発展が今後の中国をみる上で、不可欠な存在になりそうだ。

 中国国務院はさきに上海に浦東新区の建設を決めたが、これに続いて、昨年、天津に濱海新区を認めた。さらに鄭州の鄭東新区、瀋陽の審北新区にもゴーサインを出している。「新区」構想は78年代の深せん特区、珠海特区など貿易拡大を狙った産業開発区と異なる。

 同国は特区の後、行政4市、省に105カ所の経済技術開発区、53カ所の高新技術(ハイテク)開発園を認めているが、「新区」は国際化時代にふさわしい競争力のある産業・都市の建設を目指したもの。

 天津新区には浦東新区に予定されていた国際金融センターが設置されることになった。天津新区では中国銀行天津分行と香港中銀国際証券を通じて中国人民の海外証券投資を可能にする金融センターが開設される見通し。個人が人民元で直接、対外投資できる拠点となる。

 また、天津の税関が05年から構築してきた通関モデルも注目される。新区の発展、開放促進のため、通関機能を内陸部拡大した通関サービスで、今年9月の時点で西安、フフホト、ウルムチ、合肥、ラサなど12都市が対象。所在地で申告し、税関で検査、許可が得られる。

 海外からの渤海湾、東北経済への注目度は、来年夏に天津でダボス会議(世界の政財界が注目)が開かれることでも高いことがわかる。これまで一貫してスイスの小都市で開かれてきたダボス会議、アジアでは第1回が大連で開かれた。

 ジェトロの江原則由・海外調査部主任調査研究員は「この会議で温家宝総理が<中国の発展は世界情勢と切り離せず、世界の発展も中国の発展を必要としている>とあいさつしたように、経済成長が北上している中国の潮流を世界が注目している」と強調する。。

 勃海湾経済圏では中国経済の重化学工業、対外開放の新展開、沿岸と内陸の連携強化、ソフトパワーの発揮、環境保全・省エネへの配慮などの試みが実践されている。この場合のソフトパワーとは、歴史、文化、言語、人材、観光資源、ハイアール・ブランド、高速道路網である。

 中国は国際化に向けて物権法、独禁法、所得税、労働契約法などの法整備を進めている。対中投資の受入れも課題だ。一方、工場、資本の海外投資にも意欲を燃やしている。こうした中、国際モデル産業都市の計画は、天津に絞られてきたといえる。こうした天津重視の流れは、政治的にも裏づけられているようだ。