2008年01月16日
三菱レと神奈川科学技術アカデミー、モスアイ型の無反射フィルム製造プロセス開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:三菱レイヨン

 三菱レイヨンと財団法人神奈川科学技術アカデミー(KAST)は16日、世界で初めて、連続製造可能なモスアイ(蛾の目)型の無反射フィルム製造プロセスの開発に成功し、このフィルムの大面積化及び量産化の技術開発に着手したと発表した。三菱レイヨンでは、KAST・重点研究室・益田グループ(グループリーダー:益田秀樹 首都大学東京 教授)と協力してさらなる高性能化をはかり、2010年量産化をめざす。

■ モスアイ型無反射フィルムとは

 フィルムの表面に百ナノ(ナノは10億分の1)メートルスケールで規則的な突起配列を有する構造を持つフィルムのこと。この突起構造を持ったフィルムは、厚み方向の屈折率が連続的に変化するため、フィルムにあたる光を反射させることがほとんどない。今回作製したモスアイ型無反射フィルムの反射率は0.1%以下で、一般的な反射防止フィルムと比べ1/20以下と飛躍的な性能を示す。

■ 技術的背景

 KAST・重点研究室・益田グループは、アルミニウムの陽極酸化により高い細孔配列規則性を備えた多孔性構造材料「ナノホールアレー」の形成手法を見出し、これに関し活発な研究を続けている。

 一方、三菱レイヨンは、独自のアクリル樹脂の精密成形技術と光学設計技術を組み合わせることにより、プリズムの形状を最適化した液晶バックライト用のプリズムシート「ダイヤアート」を製造・販売している。

 従来、本フィルムの製造に関して、型押し工程のある「ステップアンドスタンプ法」などの提案がなされてきたが、継ぎ目がなく、大面積化することは技術的に困難とされてきた。
  
 今回、両者の技術を組み合わせることにより、モスアイ構造の連続的な製造を可能とし、本フィルムの量産化検討をスタートした。

■ 予想される用途

 外光の映りこみがほとんどないことを活かし、液晶ディスプレー・有機EL・PDP等のFPD、ゲーム機・携帯電話等のモバイル機器の前面板などで、より鮮明な画像を楽しめるようになると期待される。カーナビなどの自動車用途や、照明等インテリアの質感向上にも期待される。

 さらに、フィルムの微細な突起構造は、蓮の葉の表面と類似の構造を持つため、水をはじく効果があり、フィルムに水がかかっても濡れないという特徴がある。この超撥水効果を応用し、汚れの着きにくいガラス窓など新たな建材として期待できる。

 また、再生医療分野でも、この突起構造は細胞が平坦に吸着することを抑制するため、生体細胞を増殖させるための足場基材としての応用が期待できる。

ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1200472093.pdf