2008年02月12日
白土氏が講演「中国の変化とビジネスのかじ取り」の一思考
中国の「規制強化・税制改正の動き」を分析
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:なし

 中国の改革開放から30年が経つ。これまでの変化と今後の対中ビジネスのかじ取りについて、白土茂雄・アジア・ロジスティクス代表(TEL:04-7143-9596)がジェトロ埼玉のセミナーで語った内容の大要をまとめてみた。

 白土氏は「中国の労働者はまじめだが、インテリの“建前と本音”の使い分けは変わらない。とくに法律、政治の話をするときに“後ろ足を踏まえて”いないと不安が残る。これは今後も一貫して続くだろう。そこでチャイナ+1の考えが出てくる」と同国の国民性を指摘。

 その上で、改革開放30年で起こったこと、この開放がもたらした経済大発展、いまの重大な転機などを解説した後、さしあたっての加工貿易への規制強化、労働契約法の実施、法人税改訂などについての対応策を示した。以下はその要旨。

■ 加工貿易への規制強化、労働契約法の実施

 中国は07年12月21日に加工貿易禁止目録の追加589品目を発表、08年1月23日から施行した。これより前、06年11月に804品目、07年4月に1,140品目、6月に2,831品目、7月に1,853品目を追加している。

 加工貿易が大きな貿易黒字を生み出してきた。過去、中国への重要な貢献があったと評価され続けてきた。さらに雇用の増加、出稼ぎを通じて農民への所得移転を進めてきた意義も大きい。

 それが一転、手のひらを返したような禁止・規制への豹変ぶりは、社会主義市場経済における「社会主義」の強さを物語っている。香港ではこの措置によって、3000社、あるいは6000社が廃業に追い込まれたと伝えられている。

 同国の外貨準備高が1兆5,000億ドルを超えたことにもよるが、輸出の抑制が急激に進んでいるわけである。ただ、逆方向への揺り戻しもありうるので、あまり右往左往するのは禁物だろう。

 労働契約法(08年1月から施行)については、施行細則がまだ公布されていない。経過審議については情報が入りつつある状況だ。一方で企業側が早々と昨年末から雇用の契約解除を行い、問題を起こしているところもある。以下、私の私見を述べる。

・中国の労働契約法は、かっての日本的な雇用環境(クビにしない)を目指している。労働者が安定して就業できるようにである。

・これまでより確かに解雇しにくくなるが、日本的雇用環境を知る者には脅威とは感じられない。具体的な問題のある場合は、解雇可能である。解雇のほかに自発的な退社に持ち込む中国的な技もある。

・1社での在籍期間が2年にも満たず、一向に業務に熟達しない就業意識が蔓延している
中国では、従業員の過剰流動性のほうが大きな問題。これについて労働契約法は全くの役立たずである。関係当局のやる気と持続性が問題である。

■ 法人税の改訂 緩やかな元高を容認

 企業法人税については、ことし1月から内外企業とも25%になった。ハイテク関係の企業についても現在の15%から5年後までに段階的に25%(各年2%引き上げ)とする。国内企業(33%)との格差がなくなるが、これまで33%だった外国の一般企業は25%まで引き下げられるわけで、問題が発生するとは思えない。

 外国企業は「2免3減」といって、利益が出てから法人税を2年間、免除しその後3年間は半減する優遇政策をとってきたのだが、この優遇期間が終われば33%にされるわけで、長期的には、25%で収まるというメリットが出る。

 改革開放30年で起こったことをみると、まず、経済の大発展だろう。ドル換算で約10倍だ。その中で投資の集中した東部海岸地帯と中西部(内陸)の不均衡な発展がある(上海市と貴州省の差はGDPで13:1)。また都市と農村の不均衡。

 モザイク的に進む消費の質的向上と量的拡大。株価と不動産高騰による資産の急膨張など。一方で追いつかぬ環境保護、水資源・エネルギー資源の確保、資源開発や個人モラルの変革(汚職、不正の排除)がある。

 次いで貿易の拡大で、07年末、外貨準備高が世界1位の1兆5,000億ドル(2位の日本は9,733億ドル)となった。貿行黒字も対前年比47.7%増の2,622億ドル、ドイツに次いで世界2位(日本は約1,000億ドル)となった。

 ただし、元高圧力の高まりと過剰流動性、他国との貿易摩擦、知財摩擦、資源獲得競争での脅威感などが発生している。また期待どおり進まぬ産業の高度化、大きすぎる外資依存によるリスクの高まりがある。

 経済の大発展により、政治の壁の崩壊(人、物、金のより自由で活発な移動)、物流革命(物流コストの低廉化により中国の低コストが世界中の広い範囲でいかされた)、情報革命(通信の低コスト化、情報の迅速な入手)が進んだ。

 その背景には、外国からの投資と技術供与があるが、農民の所得は低く、遅れている。現在、農民(全国民の約57%、米国は2%)の4分の1は1日当たり1ドル、さらに4分の1は2ドルといった具合で、よくても月600ー800元にとどまっている。

 中国は、従来の発展方式の行きづまりを意識したのか、局面の打開に取り組んでいる。それは政治スローガンの和解社会の構築、科学的発展観といったことにみられる。具体的には西部大開発、三農(農業、農村、農民)問題の解決、出稼ぎ農民・都市労働者の保護、環境保全の強化、資源・エネルギー・水の効率的活用、経済産業の高度化、貿易黒字の抑制など。

 経済産業の高度化では、雇用慣行・就業意識の改革による人材高度化、単なる労働集約型の産業抑制、外資誘致の選別などに力を入れる。中国の人不足は人材不足の意味で、労働の質を上げることに重点を置いている。

 元高については、ドルの買い上げなどで世界からの脅威論をさける意向だ。ただし購買力平価を考えれば最近の1ドル7.20ー7.30元が2ー3元になる可能性もある。もちろん、まだ10年から15年先の話だ。