| 2008年03月26日 |
| 模倣品と知的財産問題、「中国のジレンマ」 |
| 黒瀬・協和特許法律事務所副所長が講演 |
| 【カテゴリー】:行政/団体(海外) 【関連企業・団体】:なし |
中国の模倣品による問題は、ますますエスカレートする状況にあるが「中国における知的財産をめぐる動向と日本の戦略」と題する黒瀬雅志・協和特許法律事務所副所長(日本ライセンス協会理事、アジア弁理士協会国際理事)の講演会が24日、東京で開かれた。以下は要旨。 黒瀬氏はまず、中国が直面する知的財産問題として (1)商標制度の機能マヒ (2)有力な特許の不足 (3)外国企業との知的財産権摩擦の激化 (4)「国家知的財産権戦略要綱」公表の遅延、の4項目をあげた。 (1)については商標出願が05年66.4万件、06年76.6万件(日本は14万件ほど)と、医薬関連を中心に急増しているのにたいし、審査能力が年30万件ほどで審査滞貨が増えている。審査に要する期間が平均36か月、異議申立期間が3ー4年。この結果、商標登録が得られない期間が長く、商標権侵害への対処が困難で商標制度が正常に機能しない。 商標問題の背景には、登録をしなければ権利保護をしないという厳格な登録主義がある。一方、模倣、盗用出願が多く、審査官が不足している。商標代理人制度の欠陥(資格試験制度を廃止、法律を知らない人が多い)もある。商標の売買も盛んだ。 日本の1出願多区分制度に対し、中国は1出願1区分制度。商標管理は地方行政(工商行政管理局)が行い、日本の「特許庁的組織」がない。自主ブランドの育成など地方保護主義の傾向もある。中国全体で“馳名商標”、省の対象として“著名商標”の認定がある。 (4)の「国家知的財産権戦略要綱」は外国企業、外国技術の特許の扱いなどをめぐってまだまとまっていない。06年2月に発表された「国家中長期科学技術発展企画要綱」は今年10月から、科学技術進歩法は7月から施行される。外国特許の乱用を抑えるための第3次特許法改正は検討中だ。 第3次特許法改正案には「権利侵害者が関連特許の実施を中止すると社会公共利益の損害につながる場合、人民法院または特許行政を管理する部門は権利侵害者による実施行為への差し止め命令を下さないことができる。ただし合理的な費用を支払わねばならない」とする項目が第15条にある。(日本は公共の利益のための特許については経産省が裁定) 最高人民法院から出された知的財産訴訟に関する意見(第6項)では「創新型国家の建設に司法的保障を提供するにあたって、利益の均衡性を遵守すること。知的財産権の保護と公衆利益の保護との関係、科学技術革新の激励と科学技術運用の奨励との関係を正確に取扱い、知的財産権を着実に守るとともに、権利の濫用と非法的独占を制止する」としている。 いずれも建前論の範囲だが、商標を財産権として認めていない中国の場合、その扱いが注目される。ただ、中国の経済活動は海外にも盛んに展開され始めている。知的財産権について国際的な対応が求められるのは当然のことになるだろう。 中国での特許出願は急増している。2000年から2006年までで43万件(香港、マカオ、台湾を含む)を超えている。総付与件数は9万件、付与率21.4%。海外からは39万件、総付与件数15万件、付与率40.7%だ。上位10社の企業別では06年が華為技術5,593件(05年3,164件)、三星電子3,770(3,159)、松下電器2,679(2,530)、フィリップス2,369(2,602)、中興通訊2,322(ー)、ソニー1,441(1,456)、IBM1,435(1,213)、LG電子1,230(1,126)、鴻海精密1,223(1,255)、鴻富錦精密1,220(1,255)(11位は浙江大1,209)。 特許についての中国のジレンマは、まず、国際競争力強化に必要な先端技術が不足していること。このため海外からの技術導入、投資促進を継続。多国績企業の特許圧力が増し、07年4月には米国のWTO提訴があった。模倣品の海外税関での差し止めも出ている。中国内企業の技術開発には特許権保護(研究投資の保障)が必要といったことがある。 日本の知的財産戦略としては、企業の個別対応には限界があるので、官民合同による対応が必要になっている。また欧米各国との連携も求められる。特に技術流出については、中国が「リバースエンジニアの正当性」を主張し始めたことに注目すべきである。これは中国側が輸入製品から技術、ノウハウを吸収した場合、独自の技術として認めるというもので、難儀な話である。 |