2008年06月05日
山本勝巳氏が「漆百科」刊行 9千年の歴史
元化学経済研専務理事 「世界に誇る漆器の復権を」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:なし

 化学経済研究所の専務理事の後、愛媛大法文学部教授を務め、現在、社団法人・日本化学会化学遺産委員会の委員である山本勝巳氏が今月、丸善から「漆百科」を刊行した。B6判298ページ(定価1,900円)。

 縄文時代から現代の漆・漆器産業まで9千年の歴史と全体像をコンパクトにまとめている。縄文時代の漆利用は北海道函館市垣ノ島B遺跡にみられるという。中国は浙江省の7千年前の遺跡。

 17〜18世紀にイギリス、フランスを中心とする欧州で、中国の陶磁器とともにもてはやされた。ジャパンは漆の世界語となった。ところが江戸時代に1,125トンもあった国産漆の年間生産量がいまや1トン台(輸入約100トン)まで落ち込んでいる。

 文化財修理用の国産漆も国の支援なしには確保できない状況だ。漆は塗料の一部とされているが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの高品質の塗料の登場に押されて衰退の一途をたどっている。

 筆者は日本が世界に誇る伝統工芸品を、いかにして再生、復権させるかを提案している。
漆は古い歴史を持つ化学製品で、接着剤にも使われてきた。漆・漆器産業と化学産業の不可分の関係を明らかにすることによって、化学製品のノーブルユースの重要性が高められるとハイクラスの扱いを強調している。

 つまり国産天然漆、輸入天然漆、植物系塗料、合成樹脂塗料、漆合成塗料と明確に分けた使い方を、漆産業の新たなあり方として構築すべきであるというのである。塗料年200万トン時代のなかでは、存在感も薄い。

 化学製品としての漆をみると、油状のウルシオールの中に水の微粒子が入って乳化している。このウルシオ-ルは油中水滴型エマルジョン塗料で、化学反応により結合し塗膜をつくる。西洋の塗料には溶剤が必要だが、塗料には不要で環境保護に問題がない。

 伝統的工芸品産業振興協会によると伝統的工芸品に指定されている23地域の05年の生産額は208億円、企業数2,777社、従業員1万1,291人。生産額のピークだった1989年の542億円に対し62%減と大きく落ちた。漆器全体は05年601億円(伝統的漆工芸品は35%)となっている。
 
 漆百科は(1)漆の強さ・美しさ(2)漆・漆工芸の歩み(3)漆・漆工芸と化学産業(4)ヨーロッパと漆・漆産業(5)漆・漆産業の現状と将来—で構成されている。