2001年05月10日
日本ABS樹脂工業会の大会長、業界の課題など語る
今後数年で日本の業界構造に大きな変化
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:テクノポリマー、日本ABS樹脂工業会

 日本ABS樹脂工業会の大建二郎会長(テクノポリマー社長)は、ABS樹脂業界が抱える5つの課題について、大要次のように語った。

 ABS樹脂業界には大きくわけて、(1)内需の構造変化、(2)新規需要・製品の開発、(3)アジアの需給構造の変化、(4)日本の業界構造の変化、(5)リサイクルや環境への取り組み、など5つの課題があると思う。
 (1)については、OA機器や家電の海外生産移転が進んでおり、需要の減少が続いている。内需は1992年の50万トンをピークに減少しており、2000年は1998年の38万トン台からは40万トンに回復しているものの、その傾向は変わっていない。内需構成比も以前は車輌、電子機器、一般機器、雑貨(現在は建材住宅部品と雑貨その他)がそれぞれ25%ずつというイメージであったが、現在は雑貨が40%前後を占めるようになり、かつての花形であった一般機器や電子機器は減少している。
 2番目の新規需要・製品の開発については、近年各社が特殊化路線を進めてきたが、今後この動きがさらに顕著となるだろう。また、AES樹脂やASA樹脂などスチレン系樹脂や炭素繊維やイミド系樹脂を使った超耐熱グレード、透明グレード、PC/ABSアロイなどの横展開が進んでいる。日本の技術開発力を活かした展開をそのように行っていくか、これらの取り組みが本当に正しいものなのかどうかが問われつつある。
 アジアの需給バランスについて、現在アジア全体で約450万トンの生産能力に対し、需要は約300万トンと見られ、過剰と言われている。このうち中国の需要は約半分を占めており、台湾や韓国、日本が相当な量を、需要過多、供給不足の中国に持ち込んでいる。しかし中国国内の生産能力拡大を含め新増設の計画は今後150万トン近くあるため2003~2005年にかけては増設ラッシュとなり、アジアの需給バランスが大きく変化する可能性がある。
 (4)に関して言えば、これまではそれぞれが一社で合理化、特殊化に相当な努力をしてきた結果、収益は若干改善したと言える。しかし、ROAの向上や配当など将来のことを考えると、会員8社、アウトサイダーを含めた9社体制がいつまでも続くとは考えがたい。この数年で新たな進展があるのではないか。
 最後に(5)については、これまでもアクリロニトリルやブタジエンの排出量の削減などに取り組み、1995年比30%削減という目標に対し、昨年までに50%前後の削減を実現しているが、引き続き今後も積極的に推進したいと考えている。また今年は、各社から製造に関するデータなどを集め、LCA(ライフサイクルアセスメント)に取り組む予定だ。