2009年02月12日
中国の事業再編の問題点と対応策「税務と労働問題大きい」
コンサルティング会社の楊楽陽部長が講演
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

三井住友銀行とIDECは今月はじめ横浜市で「これからの中国事業の考え方—激変する投資環境と新たな事業戦略」と題するセミナーを行ったが、「事例に基づく問題点と対応策」について講演した華鐘コンサルティング・楊楽陽部長の具体的な内容が注目された。

 楊氏は98年東大経済卒。75年上海生まれで、三井住友銀行を経て02年カネボウ入社。翌月から上海華鐘コンサルタントサービスでコンサルティング業務を始めた。 以下はその要旨。

 同氏はまず「中国は今後、政策的な内需振興策で国際的な金融危機への対応を図る。加工貿易型産業はほぼ崩壊に近い。失業対策と公共大型投資が重要となる。輸出型の外資系企業の立ち直りには時間がかかる。中国の経済発展は内需主導型で中西部、地方都市重点型となるが年7ー8%の成長は可能だ」と前置きし、問題点などを以下のように指摘した。

 中国で輸出産業の日本は自動車、電子、電機産業が総くずれに近い。従業員は全員一時帰休で自宅待機の状況。中国の輸出も減少しているが日本や台湾の加工貿易の減少によるもので、日本より影響が少ない。

 外資導入と輸出で伸びてきた中国だが07年を境に内需指導型に移ってきた。中国の輸出絶対額(加工貿易が40%)は多いのだが、付加価値は出稼ぎ労働力の労務費のみだ。08年の貿易黒字は2,995億ドル前年比12.5%増となっている。

 内需は08年の社会消費品小売総額が10兆8,488億元、21.6%増(都市部22.1%増、農村部20.7%増)となった。固定資産投資も17兆2,291億元で25.5%増。「世界の市場」が実現しつつある。世界の工場からの移行が進んでいるといえる。

最低賃金の上昇がここ数年著しく、上海市が月960元、14%増、深せんが1,000元、17.6%増。労働争議も多発している。ただ、09年は経済危機でもあり賃金改定は見送られそうである。

 国内総生産成長率の寄与度は07年で内需40%、投資40%、輸出20%程度だったが、08年は各44%、44%、12%と内需の比率が高まっている。政府の財政投資融資4兆元がさらに上積みされるとの予測もあり、国内総生産の伸長が期待される。

 これまでの中国の経済発展は優遇を重ねた外資誘致の成果でもあったが、すでに企業所得税の政策優遇は廃止された。輸出奨励、外貨獲得政策も方針転向している。ハイテク産業や中小企業への所得税優遇措置はあるが内外資とも平等だ。外資のよき時代は終わった。

 08年から労働契約法、年休条例、労働争議調停仲裁法などが施行され、労働環境が急激に変化している。中国経済の持続的発展を支えるのは、内需の拡大と労働者の賃金をあげることだとする認識が高まっている。

 外資系企業に求められるのは、内需拡大となる地方、特に中西部の振興であろう。ともかく中国進出企業の事業再編は必然といえる。コンプライアンスの徹底も求められる。

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