2009年09月18日
米倉・日化協会長、新政権に要望「効果ガス削減に国際的公平性を」
「実現の可能性、国民負担の妥当性などに十分な議論が必要」
【カテゴリー】:行政/団体
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米倉弘昌会長

 日化協の米倉弘昌会長(住友化学会長)は17日、理事会後の記者会見で、鳩山新政権に対する期待と要望を文書にまとめ「声明」のかたちで読み上げた。
 
 同会長はとくに、日化協がこれまで取り組んできた温室効果ガスの削減で目標としてきた数値(05年比15%)をはるかに上回る新たな削減目標(90年比25%)を新政権が掲げている点に強い懸念を示し「国民の納得がいく説明責任を果たすよう」求めた。
 
 「家庭生活の負担増など国民生活に重大な影響を与える可能性があり、日本経済の将来にとって好ましくない」、「削減の本来の目的は世界全体の排出量を減らすところにある。米国、中国、インドなど主要排出国の参加を前提に、国際的な公平性、実現可能性、国民負担の妥当性を確保してほしい」などと要望した。
 
 今後は、日本経団連をはじめ各団体にも呼びかけ、広く世論に訴えていきたいとしている。文書内容は要旨以下の通り。

 ■新内閣の地球温暖化対策について

 新政権には国民の期待に応えるよう努力してほしいが、中でも地球温暖化対策については、日本が置かれている現在の状況を正確に分析するとともに、国民の生活を守り、将来の日本の発展を確保するという観点から慎重な検討を行ってほしい。

 鳩山首相は民主党がマニフェストで掲げていた「90年比25%削減」を自ら明言され、22日の国連気候変動首脳級会合でも同様の発言をされると聞いた。一方では、具体策はこれから検討するとしているので、現時点では日本経済や国民生活に与える影響については予想がついていない。

 しかし今年4月に発表され中期目標によると、エネルギー多消費型産業の生産量の大幅低下や、既存住宅を含む全ての住宅への省エネ基準義務付け等を前提としており、GDPの押し下げ、失業率の増加、家庭負担の大幅増など、国民生活に重大な影響を与えることが予想される。

 従って、国際的な公約として中期目標を打ち出す場合には、実情に即して、幅広い視点から検討し、先進国間での国際的な公平性を確保しなければ、追加的な負担に対する国民の理解が得られないだけでなく、国内産業の海外移転や、日本に比べてエネルギー効率の低い国で生産された製品への代替、いわゆるカーボンリーケージが進むだろう。これでは国内産業が弱体化するばかりか、世界規模での輩出量増加になりかねない。

 日本の産業界はこれまでの懸命な取組みにより、世界最高水準のエネルギー効率を獲得してきたが、同時に追加的に1トンのCO2を削減するためのコストはEUや米国に比べて割高となっている。12月のCOP15に向けた今後の今後の国際交渉では、本来の目的が世界全体のCO2削減にあることを踏まえ、米国、中国、インドなど全ての主要排出国の参加を大前提に、国際的な公平性、実現可能性、国民負担の妥当性の3条件を確保することが最低限必要である。
 
 新政権には具体的な対策の内容や見通し、それに伴う国民負担や産業への影響についての説明責任を果たし、国民全体の納得を得た上での対応を求めたい。
 
 私は、産業界の地球温暖化対策への貢献は、自らの製造プロセスにおけるエネルギー原単位の改善と製品のライフサイクルを通じて、また排出量削減につながる製品の開発・提供によって実現できると思っている。

 日本はすでに世界最高水準のエネルギー効率を獲得しているので、セクター別アプローチを推進することでBAT(ベスト・アベイラブル・テクノロジー)を各国に提供することが可能だ。各国の利益につながる省エネ技術の導入が容易に可能となる仕組みづくりについて、日本は世界をリードすべきだと思う。
 
 ICCA(国際化学工業協会協議会)の報告によると、既存技術を普及させることでもCO2削減は可能で、建物の断熱、照明、包装、船舶防汚、自動車軽量化などの分野では削減効果が大きい。さらに今後は太陽光発電、バイオエタノール、風力発電などで大きな削減ポテンシャルが期待されている。
 
 日化協の会員企業からは将来こうした分野に積極的に投資していきたいという声も聞かれており、化学産業全体ではさらなる貢献が可能になるだろう。また、炭素量に関するライフサイクル分析を化学産業だけでなく、全ての産業で実施できれば、世界全体で最も効率的なCO2削減手法が見えてくると予測している。
 
 今後の地球温暖化対策の具体化には、キャップ&トレードによる排出量取引制度の創設や温暖化対策税の導入が検討されると思うが、息の長い取組みとなる地球温暖化対策の遂行には持続的な経済成長も欠かせない条件となる。両立を可能とするために費用対効果を重視し、効率的で実効性のある対策を選択していただきたいと希望する。