2010年10月07日
チッソ・ノーベル化学賞の「スズキ・カップリング」紹介
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:チッソ
記者会見する後藤常務執行役員

チッソは7日記者会見し、「鈴木先生のノーベル化学賞受賞を心からお喜びします」と述べるとともに、同社が事業展開している液晶製品の技術内容などを説明した。

今年のノーベル化学賞は、北海道大学名誉教授の鈴木章氏と、米パデュー大学特別教授の根岸英一氏ら3人に受賞が決まったと6日夜発表があったが、チッソは鈴木教授が発見した「スズキ・カップリング」を1995年、いち早く液晶製造技術に導入し、同事業を大きく伸ばし成功させた。

記者会見した同社の後藤泰行常務執行役員は「液晶は1980年代の初めから水俣工場で独自技術によって製品化してきたが、反応スピードや収率面に限界を感じていた。鈴木先生のパラジウム触媒を使って炭素と炭素をねらい通りに結合させる技術の発見は、論文などで知っていた。北大に先生の研究室を訪ねたのは1995年1月、大雪の降った日だった」と、これまでの経緯を説明。

「鈴木先生やチームの研究員たちからは、直ぐに多くのアドバイスをいただいた。95年には新製法による液晶ディスプレイ表示材料を上市することができた。液晶テレビや携帯電話などの普及もあり、その後は順調で業績も伸びている」と述べたあと、「スズキ・カップリング」の特徴として(1)高い選択性を持っている(2)副反応が少なくクリーンな反応が得られる(3)特殊な条件を必要とせず、より簡単に早いスピードで化合物が得られるなどの点を挙げた。

今では、世界の液晶テレビの半分は「スズキ・カップリング」による液晶材料が使われているという。

また、「鈴木先生の有機合成研究の成果は、化学品だけでなく医薬品その他広い分野で活かされている。私たちの身近なところで役に立っているという点では、これまでのノーベル化学賞の中でも恐らく一番だと思う」と応用範囲の広さを強調。また「先生は、今年2月に千葉の液晶センターにこられた時、“自分のやった仕事がこういうところに使われるのが一番うれしい”と話しておられた」とやや“自慢そう”だった。