2010年11月08日
米倉・経団連会長が講演「民間の力で未来を切り開く」
【カテゴリー】:行政/団体
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米倉弘昌・日本経団連会長

米倉弘昌・日本経団連会長(住友化学会長)は5日、東京・内幸町の日本記者クラブで「民間の力で未来を切り開く」をテーマに講演を行った。ことし5月の会長就任以来、同クラブでの講演は初めて。

米倉会長はこのテーマで日本経済の現状の認識と経団連がとくに重要と位置付けている「税財政・社会保障の一元化」、「アジア太平洋諸国との地域経済統合」、「日本経済の復活・再生に向けた民間主導の取り組み」について述べた。要旨、以下の通り。

■日本経済の現状については、世界金融危機に続く世界同時不況の中で、戦後最大の落ち込みを記録したが、新興国の経済回復をきっかけに昨年春ごろから本年前半まで、緩やかに回復してきた。
とくに輸出に関して中国、新興国を中心に上向いた。個人消費もエコ関連の経済対策の効果などで自動車、エアコンなどの家電がゆるやかに改善を示している。しかし、失業率が5%台で雇用情勢が厳しく、自律的な回復には至っていない。

そしてここにきて、足もとの景気回復の勢いは鈍化、先行きに対しても見通しが厳しくなっている。世界経済の減速や急速な円高の進行による影響が大きくなっているといえる。

世界経済の状況をみると牽引してきた中国や新興国が、景気過熱に対する警戒感から経済政策を引き締めの方向に転換している。米国では雇用・賃金の回復が極めて緩慢になり、夏場以降、内需が力強さを欠いている。

欧州ではドイツをはじめ堅調な回復を見せているものの、ギリシャの財政健全化の課題などがあり、国によってばらつきがある。金融市場が予断を許さない状況にある。わが国では企業の予想を上回る円高が進行、深刻な打撃を受け、デフレ脱却の目途も付いてない。

とくに為替については今のレベルで円高が続くと、日本産業の海外移転を加速させ、国内の雇用機会を喪失させる恐れがある。

そこで、政府・日銀が為替市場に介入、また一体となってデフレ脱却に取り組むこと、国内の投資促進、雇用創造を目指す政府の新成長戦略の実施、自由で円滑な企業活動を促すため、法人税の軽減、公平かつ適切な地球温暖化政策など事業環境の国際化を進めることを要望する。

税財政の改革では、政府の財政運営政戦略や中期財政フレームの設定を支持する。重要なことは社会保障関連の歳出について徹底的な合理化、効率化を進めることである。社会保障・税共通番号の導入やICTの利活用を推進、非正規労働者への社会保険の適用拡大だ。

税制については、所得税の基幹税としての機能を回復、法人税への過度な依存を改める。消費税についても税率が低いため、財政を安定的に支えるという税制に求められる重要な機能が十分に果されていない。経団連としては消費税率を欧米並みの10%後半、ないしはそれ以上に引き上げてゆく必要があると思う。

社会保障制度の改革では、わが国の高齢化が急速に進み、現役世代3人で高齢者1人を支え、2055年には1.3人で高齢者1人を支えるという見通しがあり、この対策を早急に立てる必要がある。
社会保障給付費が10年の105兆円から15年には117兆円、25年には141兆円まで膨らむ。これに対し単に社会保険料を引き上げて、給付拡大を賄う改革では経済の活力を削ぎ、雇用の創出を阻害することになる。
経団連は「中福祉、中負担国家」を目指し、消費税の社会保障目的税化と消費税率の引き上げにより、社会保障制度を国民全体で支えていく仕組みに転換することを提案する。これにより国民負担利率が現在の40%からイギリス、ドイツなみの50%になるが、将来の世代につけを回さない決断が必要である。
(高齢者医療制度、介護保険制度、子育て支援の3項目は省略)

■アジア太平洋諸国との地域経済統合については、世界経済の持続的な成長を実現する上で中間所得層の拡大がアジア地域の重要なカギを握っている。東アジア経済共同体を視野に入れながら、地域経済統合とこれを支えるインフラ整備を2本柱とする成長戦略をとる。11月13,14日に横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれる。APECの枠組みを活用して、20年を目処にETAAP(アジア太平洋自由貿易圏構想)を構築すべく道筋を策定しようとしているわけである。

そのためにはまず、第1に日韓EPAをできるだけ早く締結するとともにASEAN域内の関税が撤廃される15年までに日中韓FTAを締結し、ASEAN+3を完成すること、次に先般大筋合意したインドとのEPAに加え,豪州ともEPA(経済連携協定)を実現。

そして15年までにASEAN+6完成の道筋をつけることと並行して、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に早期に参加して、アジアと米国の橋渡しを実現することが望ましいといえる。

日中韓FTAはアジアにおけるFTAの空白を解消するとともにASEAN+6の7割を占める日中韓の貿易投資を一層活性化させるという観点からアジア太平洋諸国との地域経済統合を推進する上で、きわめて重要な役割を担っている。

TPPは最近マレーシアを含め9カ国で行われており、日本もできるだけ早く参加し,新たなルール作りに加わる必要がある。日本の事情を考慮した国境措置の取扱など、わが国の要望を直接訴える。地域経済統合には農業の担い手の確保、農地集約化による経営規模の拡大など競争力の強化が重要である。

アジア地域経済統合を推進するためには民間の事業活動を支える基幹インフラや都市インフラを整備し、経済成長のボトルネックを解消する必要がある。

日本経済の復活・再生に向けた民間主導の取り組みについては、「サンライズ・レポート=未来都市モデルプロジェクト」を提案する。都市を舞台に環境・エネルギー、ICT、医良、交通などの技術を結集し、革新的な製品、技術、システムを開発するという趣旨である。