2010年11月12日
【セミナー・講演】日中経済展望と日系企業の戦略のあり方(上)
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:なし

SMBC(三井住友銀行)と華鐘コンサルティング(本社:大阪市中央区)グループがこのほど、東京で「日中経済展望と日系企業の戦略のあり方」をテーマとするセミナーを開催した。中国ビジネスや現地の法律に詳しい3氏が以下の通り講演を行った。

(1)「現下の中国経済展望と新時代における日系企業のあり方」(講師・古林恒雄華鐘G総経理)
(2)「労働争議防止のための諸対策と人事考課給与制度の構築」(楊楽陽・同社長代行)
(3)「日中合弁案件を通じて見える中国リスクの事例分析」(能瀬徹・同副総経理)

参考になるかと思われるので、以下、要約して連載で掲載することにした。

■中国経済展望と新時代における日系企業のあり方 (講師・古林恒雄華鐘グループ総経理)

現在の中国は1980年代初頭の日本によく似ている。10年の自動車の生産販売台数は9月末で1,300万台を超え、年間では1,600万台〜1,700万台(日本の3.5倍)になるとの見通しが出ている。購買力平価GDPや貿易総額は日本の2倍を超えた。
10年に入って各地でストライキを伴う労働争議が激増。沿岸部では人で不足もあって、大幅な賃上げを余議なくされている。この傾向は今後も継続する。

中国政府は国民の所得倍増を志向しているようで、所得を5年で2倍にするためには成長率を年15%にする必要があり、賃金でも15%程度の伸びを見込んでいるのではなかろうか。経済成長率を年10%程度と見る中で、その達成には努力が必要であろう。

11年から始まる中国の第12次5カ年計画では、経済成長に合わせた賃金上昇率を目指すことになりそうで、間もなく賃金条例なども施行される。労働集約型、加工貿易型の産業は今後、地方分散型の工場立地にならざるを得ない。
土地利用税に加えて12月から、従来、外資系企業のみに免税とされていた都市建設税と教育付加税の徴収(約10%アップ)が始まる。外資企業の優遇策がなくなれば、内資企業の方が現地企業の再編に有利となる。

領土問題はどこの国にも存在する。両国で活躍する80万人近い日本人と中国の企業と学生が、民間の経済活動を通して日中の懸け橋となることが求められている。いちいちバタバタしないことも重要だ。
中国経済はGDPで日本の2倍くらいまで拡大しよう。過去10年間にマイナス6%成長の日本経済、3.3倍となった中国経済(09年で32.7兆元=1元13.5円で442兆円)。中国は世界の金融危機を経てさらに強くなった。

積極的な財政投融資で全国的にインフラの基盤整備を行ったので、これが今後の全国と中西部の経済発展の大きな基礎となる。80億人の人口を擁する中西部の成長がけん引されるであろう。GDP成長率が6〜8%で10年は続くのではないか。

中国は第12次5カ年計画(2011-2015年)で、以下の6項目を骨子とする概要を決めた。・経済発展と歩調を合わせた家計収入の増加・GDPを一定額生み出すのに使うエネルギー消費の大幅削減・環境保護税の徴収開始・不動産税の改革推進研究・労働争議の処理メカニズム研究・海洋権益の保護。

また、都市部と農村部、富裕層と貧困層の格差是正の方向を明確にした。

09年の中国の経済成長率8.7%の内訳は固定資産投資8.0%、純輸出マイナス3.4%、国内消費4.6%と発表された。輸出は前年比16%減だった。10年は固定資産投資が大幅に減少するが、輸出が回復するので9~10%の成長は実現できそうである。

時代は大きく変わる。中国は成長を続け、日本は停滞する。30年前の1979年に米エズラ・ボーゲル教授の「ジャパン アズ ナンバーワン」が出版された。今の中国に似通っていると驚かされる。

今後の日系企業は中国での事業拡大が必要となる。「中国での事業拡大」とは、中国社会の中で、中国の内資企業と対等な立場で企業活動、ビジネスを展開しなければならないことを意味する。

中国社会の1員となり、中国人と対等に付き合い、中国のビジネス習慣を身につけていかなければならない。その人材の養成が不可欠である。企業活動の重点を海外に移そうとすることは経営判断としては極めて自然だ。

リスクが怖いというが、一番怖いのは「座して待つリスク」。中国のビジネス環境は日本よりはるかに自由である。外資系企業の配当の海外送金を制限したことはないという中国側。どこで儲けるのかを真剣に考えればよい。

中国で事業を進めていく上で、最も必要なことは中国人社会との“ネットワーク”だ。近くは社内の従業員であり、そして取引先の中国系会社の幹部や従業員たち、さらには立地する地区の地域社会や政府関係者と少しずつでもネットワークを広げていくことが事業の進展と拡大につながる。(つづく)