| 2010年11月16日 |
| 【セミナー・講演】日中経済展望と日系企業の戦略のあり方(下) |
| 【カテゴリー】:経営 【関連企業・団体】:なし |
■日中合弁案件に見る中国リスク分析 (講師・華鐘コンサルティング副総経理 能勢 徹氏) 日本企業にとって中国国内市場を開拓することが、世界市場での生き残りのための選択肢であることは疑う余地はない。その際、マーケテング、中国企業へのアプローチ、現法経営(とくに労務管理)などすべての面において中国側パートナー、中国人幹部・従業員のサポートなしでは成功はありえない。 そのためには日本的な考えを捨て、中国に対する見方、中国企業・人との付き合い方を見直す必要があり、「チャイナリスク」とは何かを正しく認識する必要がある。合弁会社の設立〜経営にはそのためのヒントがある。 基本認識として的確なリスク認識が求められる。日本企業にありがちなのは、過剰なリスク認識によりビジネスチャンスを失うケース、またはリスクに対し余りにも無防備なために経済損失を被る(騙される、会社を乗っ取られる)ケースであり、多くの場合、自己責任意識とリスク排除のための仕組みが欠如している。 中国人社会では「外敵への闘争意識」が存在する。商売相手(外敵)との関係は「弱肉強食」の競争世界であり、有力企業との不平等条約はごく自然なこと。対等な立場に固執していては、取引成約は難しい。買い手が買いたければ全額前金も当然。契約書が必須ながら、それで万全ではない。売掛金回収に王道はない。 また、中国人社会では「強固な仲間意識」がある。仲間とは合弁相手、会社の従業員、地元政府府などのビジネスパートナーであり、これらとの良好な関係を構築・維持することによりリスクも自ずと軽減される。サポートを受けるためには「互恵平等」関係づくりが必要だ。 中国市場参入時のリスク認識も重要である。中国企業買収時にはD.D(デューデリジェンス=買収監査)を行って、買収対象企業に起因する瑕疵事項を洗い出す。「瑕疵が顕在化した場合の経済損失は買収前の出資者が負担する」との保証を書面で取り付ける必要がある。 買収のやり方には持分買収と資産買収があるが、対象の経営資源を活用する目的の場合は、継承・譲渡の条件を、一つ一つ契約で約定しなければならない。合弁経営をスタートさせても管理監督する仕組みが重要で、日本側出資者の自己責任の範疇と認識すべきである。 合弁会社経営に対する管理監督の仕組みを構築するには、中国側との対話ルートは唯一、董事会である。何かあれば書面持ち回りでも、董事会を開催することが重要だ。 財務経理面については、法定会計監査は会計処理と会計原則との整合性確認に重点がおかれているので、不正防止のためには月次ベースで第3者のチェックを受けるべきである。 合弁会社清算による撤退、出資持ち分譲渡による合弁経営からの撤退にはさまざまな困難がある(略)。 現地法人経営者の果たす役割には、◇リスク排除やパートナーとの関係構築のための仕組みつくり◇社内で聞く耳を持つ◇中国と日本の橋渡し役(または防波堤)となる◇自らの責任で判断する、などが挙げられる。 本社の果たすべき役割としては、◇現地の権限移譲などの意思決定・迅速化のための仕組みづくり◇現地での各種仕組みづくりに対する支援の提供◇中国に対する理解を深め、現地法人経営者の意見を聞く耳を持つことなどである。 以下は中国におけるリスク事例。 不正行為(在庫盗難、着服、不正経理、バックマージン、情報漏洩)、コンプライアンス違反(脱税、密輸、社会保険未納、残業代未払い、経営許可・生産許可未取得、環境汚染による追納・罰金・延滞金、遊休地認定、容積率不足による違約金)、与信管理不備(売掛金長期未回収、貸し倒れ)、安全管理体制不備(交通税務対策不備、PE認定)、労務対策不備(労働争議=労働仲裁、訴訟、ストライキ)、事業計画不備(事故、工場事故=火災、労災による賠償金)、製品品質不良(PL法訴訟による賠償金)、その他予測不能(土地汚染、詐欺被害、制度変更、反日デモ) (終わり) |