2011年03月03日
JST、傷ついた視神経の再生を抑制するメカニズムを解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:文部科学省

科学技術振興機構(JST)は2日、大阪大学大学院の山下俊英教授らの研究グループが、傷ついた視神経の再生を抑制するメカニズムを解明するとともに、マウスを用いた実験で視神経を再生させることに成功したと発表した。JST課題解決型基礎研究の一環として実施した戦略的創造研究推進事業チーム型研究で得られた成果である。

視神経や脳・脊髄などの中枢神経は、いったん損傷すると回復が困難になる。その原因として、中枢神経の再生力が低いことに加えて、神経経路の再生を抑制する機構の存在が指摘されている。

山下教授らの研究グループは、神経細胞で信号の出力を担っている軸索の再生を阻害する因子(軸索再生阻害因子)と結合するPIR-Bたんぱく質の分子レベルでの分析することにより、神経細胞の軸索の再生を妨げるメカニズムを明らかにするとともに、たんぱく質のチロリン残基を脱リン酸化する酵素であるチロリン脱リン酸化酵素のSHPがそのキーとなる役割を担っていることを発見した。

また、マウスの実験でSHPの働きをブロックすることで、傷ついた視神経を再生させることにも成功した。

これらの研究成果は、交通事故などの際に起こる視神経の損傷に対する新たな分子標的治療薬の開発につながるものと期待される。