2000年11月16日
中外製薬、サントリーと骨粗しょう症治療剤の共同開発で合意
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:中外製薬、日本イーライリリー

 中外製薬とサントリーは16日、サントリーが開発を進めてきた遺伝子組換え型ヒト副甲状腺ホルモン製剤「rhPTH(1-34)経鼻剤」を、骨粗しょう症治療剤として共同開発を行うことで合意した、と発表した。これにともないサントリーは今後、中外製薬に試験データの提供と原薬の製造を行い、中外製薬はrhPTH(1-34)経鼻剤の全世界における独占的開発・販売を行う。
 rhPTH(1-34)経鼻剤は、サントリーが遺伝子組換え技術を駆使して大量生産技術を確立、世界で初めて経鼻投与を可能とした製剤で、現在臨床第一相試験の段階にある。副甲状腺ホルモン(PTH:Parathyroid hormone)はカルシウム調節ホルモンの一つで、ヒトPTHをヒトや動物に投与すると骨形成を促進することが認められ、骨粗しょう症の有望な治療薬になる可能性が高いと考えられており、臨床第一相試験までの成績からも骨量増加作用を示すことが期待される。またPTHとしては現在開発されている注射剤(皮下注)ではなく経鼻を選択したことで、通院などによる患者負担の軽減も図られることを大きな特長としている。
 骨粗しょう症患者は高齢化の進展により近年増加する傾向にあり、2000年には日本人の骨粗しょう症人口は1,000万人を突破すると言われている。骨粗しょう症による骨量の低下は骨折の頻度を高め、高齢者の寝たきりを招く。1995年の調査では、骨折が寝たきりの原因となったヒトの数が11.5%にのぼり、脳卒中の20.3%に次ぐ第2位の要因となっている。また日本における骨粗しょう症関連の治療費(直接費)は、1992年で1兆3,102億円、介護付き添い費用など間接費を加えると1兆4,974億円と、国民医療費の6%に達している。このため新しい骨粗しょう症治療剤は医療経済学的な面からも期待されている。
 今回の合意によりサントリーは、急性心不全治療薬「ハンプ」などで培ってきたバイオ技術による医薬品を全世界に供給することになる。これに対し中外製薬は、骨領域で現在販売中のビタミンD製剤「アルファロール」、日本イーライリリーと共同開発中の塩酸ラロキシフェン、ポスト・アルファロールとして期待されるED-71に、今回のrhPTH(1-34)経鼻剤が加わることで、骨領域を一層強化していく考え。