2015年05月22日
エタノール燃料から常温常圧で電力を取り出す触媒開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は、阿部秀典研究員らが東北大学の藤田武志准教授らと共同で、常温常圧のエタノール燃料から有毒排気ガスの発生を伴わずに効率よく電力を取り出すことができる新しい触媒材料の開発に成功したと発表した。

エタノール燃料は、サトウキビやトウモロコシなどバイオマスを発酵して生産できるため、化石燃料に代わる再生可能エネルギー源として有望である。しかし、内燃機関でエタノール燃料を使用する際には、数百℃の高温で空気と燃料を反応させる過程が含まれるため、毒性排気ガスの発生が避けられない。そこで、常温近傍で動作するポリマー電解質膜燃料電池での利用を目指した研究が進められている。

今回、NIMSなどの研究グループは、タンタル(Ta)とプラチナ(Pt)を組み合わせた新触媒「TaPt3ナノ粒子」を開発した。この触媒を用いると、常温・常圧の水中で効率よくエタノール分子の炭素―炭素結合を切断できることを確認した。さらに同触媒は、炭素―炭素結合を切断した結果発生する有害な一酸化炭素を無害な二酸化炭素まで完全に酸化できることがわかった。

今回開発した触媒を用いることで、従来の触媒に比べて10倍以上の電流密度を達成し、毒性排気ガスの発生を伴うこともなくエタノール燃料から効率よく電力を生み出すことが可能になった。TaPt3ナノ粒子は、バイオマス燃料技術との協働によって、カーボンニュートラル社会実現へのブレイクスルーを果たすと期待されている。