2015年08月21日
阪大と東北大、金属ガラス脆化の若返り現象を解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東北大学、大阪大学

大阪大学院基礎工学研究科の尾方成信教授、東北大学学際科学フロンティア研究所の才田淳治教授、米国マサチューセッツ工科大学(MIT) Ju Li教授らの国際共同研究グループは20日、金属ガラスの緩和状態を低温の熱処理と再冷却によって回復・制御させる「構造若返り現象」を理論的に解明したと発表した。

金属ガラスは長周期規則構造をもたないランダム原子配列構造を有する金属材料で、高強度、高硬度。広い弾性変形領域と極めてたわみやすい性質をもつ特異な金属材料で知られる。200~400℃程度の比較的低温で水飴のように粘性流動を示すことから、原子レベルでの精密成形加工が可能という優れた特性を有する。

だが、このような構造では、成型加工時に構造緩和し、脆化しやすいという問題があった。一旦緩和して脆化した金属ガラスはそのままでは元に戻すことはできず、再溶解して一から作り直すしかないと考えられていた。

研究グループは今回、一旦緩和させて脆化した金属ガラスをガラス構造特有の粘性流動が発現する温度(ガラス遷移温度)直上で極短時間熱処理した後、再度急冷することによって、そのガラス構造を未緩和構造に逆戻りさせる現象(構造若返り現象)を実験でつかんだ。また、その現象が起きる機構と条件を分子動力学シミュレーションによって理論的に説明し、その制御指針を構築することに成功した。

これにより金属ガラス成型時の脆化現象を回避し、実用特性を向上させることが可能となる。
今後スマートフォンなど小型電子端末分野への応用が期待できる。
研究の詳細は科学誌 Scientific Reports(Nature Publishing Group 2015年5月26日号)に掲載された。


<用語の解説>
■金属ガラスとは:金属原子が結晶構造を組まずにランダムな状態で凍結された合金でアモルファス合金とも呼ばれる。近年、非常にゆっくり冷やしてもガラスとして生成する合金が開発されたため、特にそれを金属ガラスと呼称している。結晶構造に起因する粒界、転位、欠陥がないため、これまでの金属材料にはない特有の優れた特性を示すことが知られている。
■構造緩和とは:金属ガラスを低温で熱処理したり、成型加工等によって熱履歴が生じると、ばらばらに配列した原子が一部再配列したり、原子と原子の隙間(自由体積)が消滅したりして、わずかに規則化する現象のこと。一般に構造緩和が進行すると脆化したり、磁気特性に大きな変化(一般には優れた特性が失われる)が現れるため、回避することが必要とされる。