2015年08月21日
NIMS、ペロブスカイト太陽電池の劣化機構解明
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は21日、ペロブスカイト太陽電池の実用化の上で課題となっている「劣化が早い」、「変換効率の再現性が低い」原因について、陽イオン分子の拡散が重要な役割を果たすことを、原子レベルからの理論計算によって世界で初めて証明したと発表した。NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の館山佳尚グループリーダーらが発見した。

ペロブスカイト太陽電池は、安価で高効率な日本発の次世代太陽電池として注目され研究が進んでいるが、劣化が非常に早いなど耐久性に課題を抱えている。また、電圧のかけ方によって変換効率が変動するという問題も指摘されている。

研究では、空孔を媒介する陰イオンの拡散に加えて、これまで注目されていなかった陽イオン分子も空孔を媒介として容易に拡散し、移動しうることを世界で初めて証明した。

この陽イオン分子はペロブスカイト材料の構造維持に重要な役割を果たし、その移動が大きな構造の歪みをもたらすことから、速い劣化や変換効率のヒステリシスの有力な原子レベル機構であるといえる。さらに、これらの結果から空孔密度の減少やイオンサイズの制御が劣化等の抑制に有効であることが示された。

同研究成果は、まだ不明な点が多いペロブスカイト太陽電池内の原子レベル過程の理解を増進させ、高耐久性かつ高安定性を実現するための材料設計指針を与えるもので、実用化可能なペロブスカイト太陽電池開発に大きく貢献することが期待されるとしている。