2015年10月27日
NIMSと九大、高品質・低価格な太陽電池用モノシリコン開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構、九州大学

物質・材料研究機構(NIMS)は27日、九州大学応用力学研究所の柿本浩一教授らとの共同研究グループが、高品質・低価格で太陽電池用モノシリコンを育成できる新しい鋳造法「シングルシードキャスト法」の開発に成功したと発表した。

現在、太陽電池の主流であるシリコン系太陽電池は、付加価値を高めるために、現在の20%を上回る変換効率が求められている。しかし、従来の鋳造多結晶シリコンではこれを実現することは不可能。一方、半導体用の無転位単結晶シリコンは価格競争に生き残れないため、多結晶シリコン、半導体用単結晶シリコンに代わる第3のシリコン材料の開発が望まれていた。

共同研究グループは、こうした問題を解決するため、種結晶を使ったシリコンの鋳造法「シングルシードキャスト法」を新たに開発し、結晶の品質が良く不純物の少ない単結晶シリコン(モノシリコン)インゴットを育成することに成功した。新開発した鋳造法は、るつぼの中でシリコンを溶解し、小さな種結晶から単結晶を成長させる技術で、半導体シリコン単結晶の作製法に比べて、原料コストも製造コストも下げることができる。

さらに、この方法で育成した結晶を用いて試作した太陽電池の変換効率は最大で18・7%を記録した。これは、同時に評価した半導体用無転位単結晶(CZシリコン)ウエハの18・9%に迫る。今後、結晶欠陥と不純物の影響を更に抑えることで、CZシリコンの変換効率を上回ることが期待される。

また、現在の設備で50センチ角のインゴットまで成長が可能で、現実の生産ラインへ組み込むことができるようになった。今後、この派生技術が日本の太陽電池メーカーに移転され、価格競争力のある太陽電池産業として発展することが期待できる。

同研究成果は「Solid State Phenomena誌」9月20日号に掲載された。
10月28日開催のNEDO新エネルギー成果報告会でも発表される。