2016年07月01日
NIMSなど、永久磁石材料の内部磁気構造を定量評価
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は30日、NIMSと高エネルギー加速器研究機構(KEK)の共同研究チームが、中性子ビームを用いて永久磁石材料の内部磁気構造を定量評価する手法の開発に成功したと発表した。

ハイブリッド自動車、電気自動車などのモーターに用いられるネオジウムー鉄ーホウ素(Nb-Fe-B)磁石に代表されるように、永久磁石材料は身の回りで広く用いられている。しかし、磁気特性の高い永久磁石材料を開発するためには、材料内部の磁気構造を明らかにし、磁気特性との関連性を調べる必要があった。これまでは偏光顕微鏡、磁気力顕微鏡などを用いて材料表面の磁気構造を観察することは可能だったが、材料内部の磁気構造を定量評価する実験手法がなかった。

共同研究チームは、中性子小角散乱実験により永久磁石材料の内部磁気構造を定量評価する手法を開発した。これまで永久磁石材料では、どのような条件で多重散乱が起きるのか明らかになっておらず、磁気構造を定量的に評価する際の妨げとなっていた。

今回、Nb-Fe-Bナノ結晶磁石試料の厚さと中性子ビームの波長を系統的に変えた実験を行い、試料が厚く波長が長いほど中性子が顕著に散乱されることを明らかにした。この結果をもとに、観測した中性子小角散乱強度から多重散乱の影響を排除して解析したところ、材料内部の磁気構造を定量評価することに成功した。

今後、この手法を様々な永久磁石材料に適用することで、材料内部の磁気構造と磁気特性の関連を詳細に検討することが可能になり、永久磁石材料の高性能化へ向けた研究開発の加速化が期待できる。

この研究成果は英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。