2016年07月05日

産総研、3次元物体表面に多層CNTの成長法開発

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：産業技術総合研究所

産業技術総合研究所は5日、多層カーボンナノチューブ（CNT）を、金属や炭素材料からなる3次元物体の表面に成長させる方法を開発したと発表した。 この方法では、化学気相成長法（CVD法）によるCNTの成長に必須である金属触媒の担持層を、従来のスパッタリング法ではなく大気雰囲気中で容易に行える粒子プラスト法により形成することに世界で初めて成功した。 近年、CNTの反射率がほぼゼロである特性に着目し、CNTを遮光材や発光体に利用する試みが注目されている。しかし、汎用的な光学機器の内部にCNTが遮光材として使用された例はない。従来のCNT成長法がスパッタリング法のような真空中で行う高度な表面処理を必要とするため、成膜できる物体の形状が制限されるのが原因。 今回開発した成長法は、さまざまな金属や炭素材料の3次元形状の物体表面に、スパッタリング処理せずに多層CNTを簡便に成長させることができる。この技術により、例えば、円筒形状のレンズ鏡筒内部に多層CNTを直接成長させて鏡筒内の散乱光を大幅に抑制することでカメラや天体望遠鏡の解像度・光感度を大幅に向上させることが期待される。 また、この技術は、単層CNTと多層CNTのどちらの成長にも必要である金属触媒の担持層の成膜に簡便で低コストの粒子プラストを用いており、その条件の制御ににより成長するCNTの特性を制御できる可能性がある。CNTの新しい成長法として幅広い応用が期待される。 詳細は近く英国科学誌「Nanotechnology」オンライン版に掲載予定。